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2021.05/05 コンパウンディング時の高分子

高分子を高機能化したいときに機能向上のための添加剤を添加する必要がある。そのとき多くは混練プロセスが利用されるが、高分子の立場に立って技術者がプロセス設計できるかどうかが問題である。

例えば二軸混練機で混練するときのスクリュー設計について考え方がいろいろあることを御存じない技術者がいる。二軸混練機の老舗の一つコペリオンと日本を代表する混練機メーカーのKOBELCOでは、同様の効果が得られるとされているスクリューセグメントの形状が大きく異なる。

形状は異なるが、確かに同様の効果が得られることを確認している。面白いのはコペリオン社のスクリューセグメントでは、トルクがあまり高くならないのだ。

これをどのように考えたらよいのか。コペリオン社はその特徴からローターよりも優れている、と説明しているが、結果だけを見ていると正しいように見えるが、いつもこのような結果が得られるわけではなく、配合系が変わるとトルクが上がっても練りが良く進むローターの方が扱いやすい場合がある。

これは二軸混練機の難しさであるが、高分子の立場に立ってみれば、スクリューは混練で発生している剪断流動と伸長流動にエネルギーを伝える機能に過ぎない。スクリューで添加剤を分散している、と錯覚してはいけない。

確かに無機微粒子などはスクリューの剪断力により解砕が進行するのでスクリューで分散していると思いたくなるが、高分子が濡れたくないような無機微粒子では分散が進みにくい。すなわち、ある配合系で分散がうまくいったスクリューセグメントで異なる配合系を混練したらうまくゆかなかったケースとはこのような場合だ。

落ち着いて高分子の気持ちを考えてやると、濡れたくない無機微粒子の存在や、濡れたくても自分の都合で濡れにくい現象を理解することができる。

委託混練を行っている中小企業の社長に頼んでPPS/6ナイロン/カーボンの配合系を混練してもらったときに、PPSはカーボンの噛みこみが悪い樹脂だから6ナイロンを添加しているのか、と聞かれた。

当方は初めて担当したので理由は不明だと答えたが、カーボンが逆流して軸の隙間からこぼれてきたのを見て、この社長は6ナイロンが入っていても嚙み込みが悪いのか、とぶつぶつ言っていた。

この社長はPPSの混練は慣れている、と言っていたが、その慣れている社長がこの有様である。もちろん誰でも失敗はあるが、失敗の原因はPPSという樹脂の気持ちを理解していなかっただけだ。

PPSは、その気持ちに合わせて混練条件をうまく選定してやるとカーボンとはよく濡れる。当方が3か月で立ち上げた混練ラインではカーボンが逆流するような現象は発生していない。

これは高分子の相手が無機微粒子の場合だが、相手が低分子の場合には、混練条件でブリードアウトの傾向が変化することも高分子の気持ちになって想像してほしい。

カテゴリー : 一般

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