2021.05/14 高分子の難燃化技術と環境問題
高分子材料には何らかの添加剤が含まれ市場に提供されている。この添加剤が環境問題を考えるときに難しい問題を引き起こす。すなわち添加剤によっては代替材料が見つからない場合があるからだ。
家電リサイクル法はじめ各種環境関係の法律が制定され始めた20年ほど前に高分子同友会では環境関係の法律が高分子事業に及ぼす影響について議論している。そのとき抽出された大きな問題の一つに難燃剤があった。
どのような高分子でも火災が発生すれば燃える。そもそも火災とは急激に進行する酸化反応なので空気中で燃えない高分子など存在しない。このことを知っていたのかどうか知らないが、かぐや姫は求婚を迫る皇子に対し結婚の条件として絶対に燃えない衣を要求している。
空気中で絶対に燃えない不燃高分子は存在しないが、燃えにくい高分子は存在する。例えばPPSは着火してもすぐに火が消える。ゆえに高分子材料では火災に対して燃えにくくする機能を不燃化と言わずに難燃化と言っている。
PPSのように空気中の燃焼で自己消火性を示す材料は用途により難燃剤が不要となるが、高分子材料の多くは添加剤が無ければ空気中で自己消火性を示さないので、用途によっては難燃剤の添加が避けられない。
難燃化技術の説明を省略しているが、例えば電子材料への応用を考えたときに必要不可欠となる難燃剤の中には環境ホルモンや発がん性その他の環境負荷の大きな化合物が存在する。
そのような話を聞くと、難燃剤無添加の難燃化技術を開発しようと考える人も出てくるが、これはかぐや姫の発想と笑われる可能性がある。
そのような発想も理想追及のために必要かもしれないが、高分子の難燃化技術に詳しい人からは、絶対に困難だと反対される。高分子の燃えにくさという火災に対する絶対的尺度が存在しないので、各業界ごとに存在する難燃化規格を例に説明する。
例えばUL規格では、この規格にまったく合格しない高分子材料に添加剤を加えないで5VBという規格に合格するように変性できない。難燃剤の添加が不可欠である。
長年の経験から高分子材料の難燃化技術は、今日の環境問題の動向変化から20年前と異なる段階になてきており、技術の見直しが必要と思っている。だからどうしたらよいのかは、ご相談いただきたい。
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