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2021.05/31 科学の視点を外した観察

15年前に特許が公開されているが、PPS/6ナイロン/カーボンの組成で製造された半導体ベルトは、非科学的な高次構造のコンパウンドから製造されている。特許は非科学的でも技術で実現できれば権利として成立する。

フローリー・ハギンズ理論では、PPSと6ナイロンの相溶は否定される。しかし、この半導体ベルトでは、大半の6ナイロンがPPSに相溶している。

この半導体ベルトは、科学の理論で否定される組み合わせにおいて相溶とスピノーダル分解を制御して現れるカーボンのソフト凝集体が分散した高次構造となるように設計した。

すなわち、コンパウンド段階でPPSと6ナイロンとを相溶させて、押出条件の制御により、6ナイロンをわずかにスピノーダル分解を起こして析出させて、カーボンをその相分離し始めた6ナイロン相にソフト凝集体として閉じ込めている。

このような高次構造設計は科学的に考えていては絶対に思いつかないアイデアである。そもそも6ナイロンとPPSを相溶させるという考え方を一流コンパウンドメーカーの技術者に説明したところ「素人は黙っとれ」と言われている。

このようにこのアイデアを話したところ一流コンパウンドメーカーの技術者から笑われたので自分でそのようなコンパウンドを製造できるプラントを建てなければならない事態になり、ゴム会社時代と同様の徹夜業務をする機会に「恵まれた」。(注)

3か月で立ち上げたプラントから目標となるコンパウンドが出来上がった時に、その仕事のために中途採用された若者は腰を抜かしたが、当方はその瞬間それほど感動しなかった。

むしろ非科学的視点で現場観察をして、コンパウンド設計を思いついたときに高純度SiCの合成に初めて成功した時と同様の感動を体験している。(注)

非科学的な機能で制御された現象に出会う機会は多くてもその瞬間を常時とらえるためには、科学で固まった頭を一度ほぐす必要がある。

(注)ドラッカーは働く意味を「貢献」と「自己実現」にあると著書の中で述べていた。過重労働は健康を阻害する問題があるので管理者の立場ではそれが不要となる職場環境とするのが任務である。しかし、一生懸命働いてみたい、と思っている人もいるのではないか。時間単価など考えず、純粋に「貢献」だけ考えて自由に働き成果が出たときの爽快感は格別である。「やりがい詐欺」などという言葉を述べている一流大学の女性教授がいるが、かつてスーパーボランティアとして注目を集めた人が現れ、それを社会がたたえる現象をどのように考えるのか。衣食住が満たされた時に社会に「貢献」したい、と自然な欲求として出てくる様な社会が理想ではないか。周囲から業務妨害をうけながらも経営から期待された成果を出して報われず転職した経験をしてみると、少なくとも妨害が無い職場は天国と感じるものである。一生懸命働ける職場を「やりがい詐欺の職場」と表現される女性教授は、FDを壊して仕事を妨害する職場をどのように表現するのか。働くことが、快楽となるような環境を創り出すことはやりがい詐欺ではない。力いっぱい「貢献」と「自己実現」できる社会では、幸福感と生産性の向上が両立するはずである。また実際に力いっぱい働き一度幸福感を味わうと働くことが遊びと同じような感覚になってくる。

カテゴリー : 一般 高分子

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