2021.06/01 形式知からの解放
巷で流れている音楽は、ドレミファソラシドというメジャースケールを基本としてメロディが作られ、そこにリズム楽器が加わった形式である。
これは科学誕生直前にバッハが考案した、と説明してしまうと専門家に叱られるかもしれないが、細かいことに目をつぶればあるいは、バッハの平均律から始まった、ととりあえずさせていただきたい。
一方アメリカに奴隷として連れてこられた黒人が、西洋音楽を演奏するためのクラシックギターを使って発明した音楽にブルースがある。このブルースで使用されるブルーノートスケールはドレミ♭ミファソ♭ソラシ♭シドである。
これについて19世紀に白人が黒人に西洋音楽を教えたところ、憂鬱(ブルー)な奇妙な音程で歌いだしたのでブルースと名付けられた、という言い伝えがある。当時の黒人の地位や立場を考えればありうる話、ではない。民族には民族特有の音感からなるスケールが存在するという意味である。
これを理解できるとカラオケで多少音程が外れていてもメロディーとして聴こえておれば笑うべきではない、と思いたくなる。音程から外れる理由はその人の出身地や民族のルーツが影響しているのかもしれないからだ。
メジャースケールと異なりブルーノートの誕生について諸説あるが、とにかく黒人が19世紀に西洋音楽を聴いて歌い始めたのが最初である点は一致している。
さらに黒人は12小節からなるブルースを歌っていた。そこから白人がロックやジャズを生み出している。クラシックの対極にあるポピュラー音楽の大半は、ロックやジャズに影響を受けている。
もしブルースが生まれなかったらポピュラー音楽は平原綾香の楽曲のようなクラシックのカバー曲が溢れていたかもしれない。
音楽の世界では、クラシック(形式知として捉えられる)から解放された結果多種多様な音楽が発展してきた、とみなすことができる。
ところが技術は、20世紀に科学一色で塗りつぶされた。科学誕生以前にも技術の発展はあり、その開発手法も存在したにもかかわらず非科学的と言う理由で排除されてきた。
iPS細胞が非科学的手法で発明された事実をご存じない方が意外と多いことにびっくりしている。山中博士は受賞時のインタビューで熱く語っていたその手法を受賞後は語らなくなったことも一因かもしれない。
技術開発をするときに、特に科学的に開発を進めてきて隘路にはまった時には、一度科学という形式知から思考を解放してやる必要がある。そのため当方のセミナーでは彼のiPS細胞発見時のドラマを話すようにしている。
単なるやってみなければわからない、という体育会系の根性開発も許されるが、現代的には多変量解析やラテン方格の利用が有効で科学で頭が固まった人でも受け入れやすい。さらには弊社の研究開発必勝法も技術開発の一つの方法である。
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