2021.06/24 弾性率と強度(1)
弾性率と強度は異なるパラメーターであることを御存じない方が多い。その他にヤング率とか、体積弾性率とか、剛性率、硬さ、ポアソン比などと材料物性に関わる周辺の言葉の意味を理解していないと、材料開発を失敗する確率が高くなる。
もっとも失敗することにより、その原因から差異を理解し、経験知が増えてゆくから失敗も無駄ではないが、ボーっと実験をしていると、せっかく得られたはずの経験知を取りこぼすことになる。
技術開発を行っている、と明確に認識しておれば、経験知は確実に増えるが、ボーっと科学をしていますとか、科学技術の開発をしていますと応える様な人は経験知が増えてゆかず、不幸なことに間違った形式知を記憶することになる。
まず、これらのパラメーターは、計測者の力量や計測方法が原因でばらつくことを知っておこう。これは科学において現象を観察するときに、誰もが知っていることである。もしこれが正しく理解されていなかったら、STAP細胞の有名な女性研究者のような未熟な科学者どころか科学者ではないと言われかねない。
計測者の力量や計測方法のばらつきだけでばらついている、と認められて初めて科学で理解された現象として認められ、そこから形式知が生まれる。結晶の弾性率はそのようにして求められた唯一の値である。ゆえに教科書には、弾性率の説明として物質固有の定数などという説明が与えられたりする。
その弾性率の定義は、単位歪当たりの力、すなわち力を歪で割った値である。これが定義されてヤング率や体積弾性率が求められることになる。
ところが、強度は弾性率だけで決まらない。ここを正しく理解していない人が多い。ひどい人になると引張強度から弾性率が求まる、と言って安直に引張試験を行い、得られたSSカーブから適当に計算した弾性率をその材料の弾性率として記載している。
簡単そうに思われる強度と弾性率であるが、アカデミアの先生でもこのあたりをいい加減にされている方がいたりする。ポスター発表の時にSSカーブを見つけるとお決まりの突っ込みをしてみるが、正しく答えられる人は少ない。
学生で正しく答えられる人に出会ったことは無い。これは偏差値とは相関していない。指導教官の力量と関係していると思っている。偏差値が低い大学でも優れた科学者とみなせる先生の指導であれば、形式知について学生は正しく答える。今の時代、大学の偏差値と社会での活躍は相関しなくなっている。
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