2021.06/25 弾性率と強度(2)
弾性率は物質固有の定数、と教科書に書かれたりしている。実はこのような前提が崩れると材料力学の形式知の体系が吹っ飛ぶことになる。ゆえに弾性率に関する科学的研究はかなり昔から行われてきて、1970年代でも日本化学会の年会でその考察が発表されたりしている。
物理学会ではないのに化学会でもそのような発表があったのは、物質起因のばらつきを議論したいためであった。すなわち、弾性率のばらつきは、単結晶<多結晶<非晶質体と大きくなってゆく。単結晶でも結晶格子が乱れてもばらつくはずである。
技術では、このような厳密性を認めていては大変なので、単結晶から非晶質体ぐらいの差異であればばらつきは変わらないだろう、ぐらいの扱いである。ただ、これは技術者によりことなり、ノリの悪い人では単結晶と多結晶体との弾性率のばらつきで悩んだりしている。
ノリの良い人では、多少の欠陥があっても弾性率がばらつかない、と考えたりしているが、弾性率と強度は同じものあたりまで来たノリは、16ビートのノリを4ビートでごまかしているのか、あるいはうまくワルツのリズムでノッテしまっているような人で、時として開発は成功することもあるが、原因不明の失敗をする場合が多いような人である。
実務で弾性率というパラメーターを扱う時に、強度からその定義に従い求めるのだが、歪をどのように扱うのかによって弾性率のばらつきは影響を受ける。このあたりから技術者の経験知の量に影響をうけはじめる。
セラミックスや金属、高分子ではSSカーブは大きく異なる。高分子の中には金属に近いSSカーブを示す材料もある。セラミックスと同じような高分子のSSカーブが得られた時にびっくりしたが、この時は弾性率を求めることができなかった。
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