2021.07/06 心の靭性
金属材料からセラミックス、高分子までうまく複合材料の配合設計ができれば靭性を改善できることが技術的に理解されている。ここで科学的に、と書いていないのは、靭性というファクターが科学的に完全な理解がされていないからである。
それではいい加減なことを本欄は書いているのか、と言われそうだが、まじめに書いているから技術的にと表現し、わざわざ靭性は科学的なパラメーターとして認められていない、と断っている。
科学的に証明が難しい理由として、同じ配合でも靭性が大きく異なる材料ができる場合があるからだ。このような現象について科学的に証明しようとするとすぐに否定証明に走る研究者が多い。例えば「ゴムからの抽出物で電気粘性流体の増粘する現象を界面活性剤で解決できない」などという科学的真理を導いてしまう。
この問題の場合に完璧に解決することは難しくても、界面活性剤の添加により実用レベルで使用可能にできる。すると問題解決方法は、「増粘の程度を最小限にできる界面活性剤」の探索となる。これが正しい問題となる。
実は靭性の問題にしろ、人生の問題にしろ、正しい問題を見出して解決する習慣を身につけておかないと、否定的に物事を考える習慣が身についてしまう。研究開発の下手な人は皆この習慣を身に着けており、何かアイデアを語ると、すぐにそれを否定する事例を持ち出す。このような人たちの心の靭性は、恐らく脆いと思っている。
心の靭性を高めるためにまず大切なことは、現象を見るときに否定的に見ないことである。たとえ多くの他人が否定しても、どこか肯定的にみられる「何か」を見出すことはできる。どう見ても肯定的に見られないなら、それは全くダメなことが最初からわかる簡単な現象と捉えることができる。
全くダメと納得できたなら、諦めればよいだけである。また、全くダメなものを何とかしようとしても良くはならない。今回の都議選では、都民ファーストの会がボロ負けし自民党が大勝する、と1か月以上前の予想では言われた。
この4年間の小池都政やコロナの状況をみれば、このような予想は当方でも立てることは可能だ。すると突然小池知事は過労で入院、と言い出した。
そして自民党幹部A氏は、「最初からダメと分かっている組織を作ったのは小池さんでしょう。国とのパイプがないから全部自分でやらなければならない。だから疲れたのは自業自得」と余計なことをいったものだから、世論は都民ファーストへ応援するように動いた。
投票率が低かったので共産党や公明党に有利に働き、公明党も議席を減らす予想が出ていたにもかかわらず、現状維持、共産党と共闘した立憲民主が少し伸びたが、今回の投票率ならばもう少し善戦できたはずだ。
政治評論をするつもりはないのでこれ以上書かないが、結果は議席を減らしてはいるが都民ファーストの会は善戦し、自民党とほぼ同数の勢力となった。小池チュルドレンと呼ばれる人で無所属当選した議員を加えると自民党を越える。逆に1か月以上前は大勝すると言われていた自民党の今回の当選者数に、おそらくA氏は危機感をもっているだろう。
選挙で何もしなかった小池都知事の圧勝である。小池都知事の心の靭性は極めてタフであり、おそらく乙女心のように壊れることはないのかもしれない。ただ、何もしない、という決断には勇気がいる。心の靭性を高めるには、いつでも物事を良い方向へ導けるよう決断できる勇気を養うことが大切である。
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