2021.08/19 オーディオ業界に学ぶ(7)
商品のマーケティング対象としてオーディオ業界は面白い。アナログからデジタルの変換が起きて銀塩写真フィルムの世界は急激にシュリンクして、4社寡占状態だったフィルム業界は富士フィルム1社が生産しているだけになった。
オーディオ技術に関して、例えばアンプ技術を見てみてもAクラスアンプ、Bクラスアンプと技術開発が続き、ABクラスアンプが登場したがこれらはアナログ技術である。デジタル化により登場したアンプはCクラスではなくDクラスアンプと呼ばれているが、写真フィルムのように過去のアナログアンプを駆逐することは無い。
それどころか、音楽供給メディアまでデジタル化されてもAクラスの真空管アンプが最高とかアナログレコードが最高とかいう声を聞く。もちろんこのような声は少数派であり、そのためこれらのニーズにこたえた商品は手作り以上のプレミア価格がついて販売されている。
世の中すべてがデジタルになってゆくのか、と思っていたら、音の出口となるスピーカーについてはデジタル化された製品が販売されていない。技術的にむつかしいからだ。
おそらくスピーカーは21世紀もアナログ技術の製品が使い続けられると思われるが、このような技術的制約がオーディオという商品には存在するが、それでもかつて活況を呈したホームオーディオの市場が高級品だけにシュリンクした事情を説明できない。
音楽愛好家は、今も昔も変わらずに存在する。ただし、TV番組を見るとその中身は大きく変わり、クラシック音楽愛好家は減少するととともに音楽のジャンルは単純ではなくなった。様々な音楽ジャンルとその他と結びついた音楽が溢れている。
クラシック音楽ならばコンサート会場という基準が存在したかもしれないが、それ以外の音楽については、ハイファイと言ったときの基準となる音が存在しないというのが実情だ。ジャズならばライブハウスが、と指摘する人がいるかもしれない。
しかしライブハウスはクラシック音楽のコンサート会場の様な基準となりえない。時として音楽と異なる雑音の存在も良い音の条件になったりする。このような状況でホームオーディオが目指してきた良い音と言う定義が怪しくなってきた。
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