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2021.08/31 新材料は気合だけではできない

昨日オリンピックの影響もあり、浜口親子を思い出し「気合いだ!」と叫べば新材料が簡単にできる誤解を与えるような表現になって後悔している。気合いだけで新材料はできないのである。


とかく材料開発は失敗と挫折の連続である。だから気合が必要なのだが、気合をいれれば必ずできるわけではないので、昨日の内容について補足を書く。


気合をいれても、頭が空っぽではレスリングさえできない。レスリングは喧嘩ではなくスポーツである。ルールの中で技を繰り出し、一瞬の攻めどころを見出して勝てるのである。だから、レスリングでもそれなりの頭脳がいる。


材料開発も同様で、形式知と経験知と言う明確な枠の中で技を繰り出し、新材料を創出するのである。レスリングが一瞬の攻めどころを攻めて勝てるように、材料開発では目の前の現象に暗黙知が刺激を受けたときに偶然できてしまうことがある。


セラミックスから高分子材料までありとあらゆる材料開発を経験してみると、実際に偶然できてしまった体験が重要であり、その感覚を忘れないように言葉として残しておき、これが後々の開発に大変役立っていることに気づく。


すなわち暗黙知を具体的な言葉に落とす習慣が重要である。STAP細胞ではハートマークの実験ノートが話題になったが、当方の実験メモには、わけのわからない妄想が幾つか言葉として表現されている。


下手な絵もいくつか残っているが、文章で残す努力をしてきた。樹脂補強ゴムの開発では、指導社員も飽きれていたが、検討候補の樹脂材料について10部づつ添加した配合処方30数種類を徹夜して一気に混練している。


理由は、日をまたぐと現象を眺めた感想の表現が変わる可能性があったからである。10部しか入っていない樹脂相がうまく海となった海島構造が目標とされたが、ナノオーダーの構造変化がロール混練プロセスでマクロな現象として観察できたのである。


本当に観察できていたかどうかは、翌日以降の電子顕微鏡写真との照合で確認している。昼食や夕食を抜いて続けて混練していると、微妙なマクロ変化の共通点が見えてきた。それが電子顕微鏡写真の結果と一致した時に暗黙知が経験知に変わる習慣だった。


これは食欲睡欲の二つの欲求を犠牲にして気合を入れて実験を行った成果であるが、得られた経験知をすぐに応用し、世界で初めての樹脂とゴムのポリマーアロイ防止ゴム配合処方を短期間に開発できた。ただし、短期間に開発できた要因はもう一つあるが、これは後日この欄で述べる。

カテゴリー : 一般 電子出版 電気/電子材料 高分子

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