2021.09/13 45歳定年制
サントリーホールディングズ社長が提案されている45歳定年制は、そのうちに実現されるに違いない。9月9日に開催された経済同友会夏季セミナーの話題がニュースとして報じられており、それを読んで感じた。
ニュースでは、雇用市場やポストコロナ禍の経営が論じられたとあり、キーワードは、「45歳定年制」と「アジャイル社会」だそうである。発想が陳腐である。
今日本社会を建て直すために重要となってくるのは、競争社会における脱落者の受け皿であり、再教育の場である。これが今の日本社会には欠けている。また、経営の効率化と称して企業内の教育の場も狭められて来た。社内図書館を無くした企業も多い。
このような人材を鍛えなおす場を用意せず、組織から人材を追い出す施策を進めてゆくとどうなるかは明白である。当方が経験した組織内の仁義なき戦いが常態化し、他人のFDを壊すことを平気で行うような人材が増えてくる。
会社内を厳しくすれば20代30代で勉強するようになる、という発言がニュースに書かれていたが、発言している人が本当に20代30代にまじめに勉強していたのか、胸に手を当てて考えてほしい。20代30代は会社のために一生懸命になっている年代であり、その一環として同僚と遊んでいる時間が多い世代である。
当方は自己実現に努力したサラリーマンと思っているが、それでも勉強したのは冬の間の日曜日だけである。春夏秋の休日は同僚と海や山へ遊びに行ったのである。さすがに冬だけは勉強時間に、とウィンタースポーツには一切手を出すことを辞めたが、同僚の多くは、ウィンタースポーツも楽しんで出世していった。
組織の仕事では、自分が勉強していなくても他人の成果をうまく横に流せばそれで評価されるのである。多面評価では、むしろそのような人物は、効率的に業務を動かす能力として高く評価される傾向がある。これは会社の機能と組織の関係を考えれば自明である。そこでは露骨に行わないことが重要なスキルになる。
この10年、各種ハラスメントに対する企業の対応には目を見張るものがあるが、それでもこのような組織内犯罪と呼んでも良い無慈悲な扱いの被害者となり自殺を選ぶ者が絶えない。本来会社内の業務を推進していて自殺者が出るのはおかしい、という発想が欠けている。自殺の原因はパワハラだけではないのである。
トヨタではパワハラによる自殺者が出たために一気に人事評価を多面評価に切り替える、と報じられたが、多面評価に切り替えたから改善されるものではない。多面評価には表に出ていない、企業経営にとって致命的な欠陥がある。
弊社は社会の再教育の場を提供する企業として、細々と活動しているが、本来自分を磨く勉強は自分のポケットマネーで行うべきであり(注)、そのための社会インフラなり税制なりをまず変えなければいけない。
例えば働く人が自己啓発のために使った費用を所得控除として認めるとかする税制改革である。あるいは弊社のような企業に対する補助金対策や教育費用のサポート施策も重要である。
(注)当方は学位取得にあたり、ゴム会社にはいろいろお世話になった。すなわち有名国立大学に奨学寄付金をゴム会社は数年にわたり支払ってくださったばかりか、研究内容の社外発表にも配慮していただけた。しかし、本部長が交代し、FD事件が起きて転職したところ、有名国立大学の先生から転職先の会社からも奨学寄付金を納めてください、と言われた。退職金から出そうということも考えたが、論文を勝手に出された問題もあったので、潔く辞退した。その後学会の懇親会で学位の話が出たので一部始終話したら、中部大学の先生から審査料だけで良いから再度学位を目指さないか、と激励された。ところが、英語で出来上がっていた学位論文を日本語で書き直す作業も含め、学位試験までフルセットの指導が丁寧に行われて大変だった。適当に過ごしておれば取得できそうな過去の経験があったので、一時慌てたが、頑張ってなんとか学位を取得できた。ただし、審査料や交通費は自腹を切っている。中部大学の先生方の立派なところは、お礼はいいから社会貢献してください、と学位授与の時に言われたことである。お言葉に甘え、現在の会社の起業を志した。
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