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2021.09/21 学びにくい高分子の混練

「高分子の混練り活用ハンドブック」という本をゴムタイムズ社から出版しているが、高分子材料を扱っている人には、ぜひ読んでいただきたい。混練技術に関する教科書が分配混合と分散混合を中心に書かれていることに疑問を感じ、ゴム会社で新入社員時代に3か月間座学で学んだ話を中心にまとめている。


高分子に微粒子を分散する事例では、分配混合と分散混合の説明はわかりやすく、形式知として体系化しやすい。しかし形式知として体系化できても、それを実務で役立てることができなければ意味のない学問である。ここで実学偏重という批判は勘弁してほしい。


学問のための学問も尊いかもしれないが、仮に実際の混練現象を説明できない混練の科学という体系を作り上げたとしても意味のないことを理解してもらえると思う。


今から15年以上前に写真会社でPPSと6ナイロン、カーボンの単純な3種類の配合のコンパウンド工場を設計する必要に迫られたとき、1冊10万円前後の教科書を4冊、自腹を切って購入した。


半月かけて読み終えて、どぶに40万円弱を捨てたような気分になった。役に立たない教科書だった。少なくとも目の前にあった問題を40万円ほどかけて購入した本の形式知をつなぎ合わせて解こうとしても、ヒントさえ得られなかったのだ。


ただし、外部の一流コンパウンドメーカーから購入していたペレットの問題点を理解できた(注)が、それを改良しようとしたときの方向が分配混合と分散混合中心の教科書では見出せない。


仕方がないので、35年前に混練の神様のような指導社員から教えていただいたことを記録した手帳を探し出して、それを読み返してみた。カオス混合のアイデアまで書いてあった。そして問題解決の方向を見出すことができた。ゴムタイムズ社から出版されている本は、その時の手帳をまとめなおしたものである。


(注)電顕写真を見る限り、カーボンの大きな凝集体は見当たらないか、細かい均一な凝集体の分散状態だった。すなわち、形式知から分散混合が進んでいると説明できるが、分配混合はどの程度か評価する方法が不明だった。そこで、いくつかの区画を切ってカーボンの数を数えてみたのだが、それが等しかったので分配混合が進んでいる、と理解した。

日本を代表するコンパウンドメーカーの技術者が自信をもってコンパウンド技術は完成している、素人はだまっとれ、といっていたので、世間一般の混練の科学の視点で間違ったものはできていなかっただろうことを納得した。

ところがそのコンパウンドで押出成形を行い、ベルトにするとベルトの周方向で4桁以上抵抗がばらつくのである。コンパウンドメーカーの技術者は、その原因を押出成形技術が未完成だから、と説明している。6年近く、前任者が開発してきたプロセスである。コンパウンドメーカーの技術者の言い分では、前任者が、よほどの間抜けで、当方は素人となる。

ゴム会社の職長から伝授された経験知では、押出成形において成形精度の問題だけに集中しないとモノができない「いってこい」の世界である。すなわち、成形精度以外の問題解決は、コンパウンドで解決するのが鉄則である。この鉄則に従ったときに、コンパウンドをどのように改良するのかという答えを既存の混練の教科書に書かれた形式知から導くことができない。

形式知からは導くことができなかったが、ゴム会社で習った「形式知に裏づけられた経験知」で答えを見出すことができた。既存の混練の形式知が間違っているかどうかは知らないが、それがコンパウンド開発に役立たないことを経験した。

当方が中古の混練機を購入し3か月で作り上げたプロセスで製造されたコンパウンドを既存の押出プロセスへそのまま流したところ、ポリイミドベルトよりも抵抗変動が小さいベルトを押出成形できた。押出プロセスは完成していたのである。コンパウンドが未完成だった。

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