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2021.09/29 樹脂の混練

樹脂の混練技術を担当されている方は、樹脂は溶融温度(Tm)付近で混練する、と教えられた人が多い。高分子学会賞に推薦された時に、審査員から混練温度が低いことを指摘されて落選している。


ただしこの時の審査員の理由は、分子の断裂が起きるので相溶が起きてもおかしくない、というものだが、審査員の考え方は間違っている。その時分子量分布の変化も示したが、PPSは測定が難しい材料だ、とデータを懐疑的にみられている。


この結果実績を積み重ねるために中国で活動する決断ができた。どうも日本社会は異なる見解や独創性について冷たい仕打ちをうける様な体験が多い。このような体験から、樹脂の混練をTm近辺で行うのは形式知同等の知識と思われているのではないかと心配して本日書いている。


当方の混練技術はゴム会社の新入社員時代に混練の神様と呼んでも良いような方から3か月間技術伝承されたもので、カオス混合技術もその時に指導され、これを多軸混練機で実現するのが当方の宿題になった。


この宿題は、たまたま退職5年前に豊川へ単身赴任した時に実現できた。製品化まで半年と残された時間のない中で、カオス混合を応用した混練プラントを中古の二軸混練機を購入して立ち上げたのだ。


このプラントで出来上がったPPSコンパウンドは、一流コンパウンダーのコンパウンドと高次構造は全く異なり、半導体ベルトと同一の高次構造になっていた。


そして解決できなかったすべての問題をこのコンパウンドで解決することができた。成形工程の難題には、コンパウンドを改良しない限り解決できないことが知られていない。特に押出成形では形状付与以外の問題は、コンパウンドで解決するのが鉄則、というのはタイヤ工場の職長から教えられた経験知である。


Tm温度付近で混練していないだけでなく、カオス混合を行った結果だが、混練条件が異なると出来上がるコンパウンドの高次構造まで異なってくる、というのは混練の神様から教えられた重要なスキルである。


(注)樹脂をTm温度以上で混練する場合もある。分配混合と分散混合中心の考え方では、混練温度などの条件をどのように決めたらよいのか、このあたりの考え方の重要性は強調されないが、当方の執筆した混練活用ハンドブックは分配混合と分散混合とは異なる視点で混練技術をとらえている。40年ほど前に指導された技術であるが、中国では新技術として受け入れられた。

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