2021.11/16 高分子材料のツボ(1)
高分子材料を扱っていて困るのは、教科書が実務的に書かれていないことである。また、よくわかる高分子とか名づけられているものは、わかった気になるがそれで目の前の高分子材料に関わる問題を解けないじれったさがある。体系的ではないからである。
学生時代の高分子科学に関する授業は重合反応が中心だった。あとはフローリーの「高分子」を教科書として用いた高分子物理が大学院の授業として行われている。
これらの教科書に書かれたどのような重要な理論よりも、もし手近に複数の組み紐があればそれを手の中でよく揉み、放り投げて床に落ちてできた状態を観察して得られた知識の方が役に立つ。
そこには、密度の高そうな部分Aとスカスカで密度の低いところBとができている。そしてよく見ると密度の高い部分では、紐がうまく重なっているところがある。密度の低い部分では、紐が自由に動きそうなほどスカスカの部分B2ができている。
結晶化していない高分子材料はおそらく全体が非晶質(ガラス)となっているが、無機材料のガラスと異なり、構造としてこのような密度のばらつきができているに違いない。
ガラス相でもぐちゃぐちゃに他の紐とくっついている部分(Bに含まれるがB2以外)は、分子運動性が拘束されている。一方、スカスカでくねくねと動けそうな部分(B2)は、実際に分子運動が行われており、自由体積と呼ばれている。
結晶化していない高分子材料は1組成の高分子材料でもこのような2種類の構造が必ずできる。そしてそれらの構造の比率も一定ではない。そのため高分子材料の密度はばらつくのである。
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