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2021.11/17 高分子材料のツボ(2)

昨日結晶化していない高分子材料について、ガラス相に2種類の構造が存在することを書いた。高分子に限らずあらゆる物質はそれが存在する雰囲気温度に相当するエネルギ-を持っている。


例えば、空気は主に酸素分子と窒素分子で構成されているが、それぞれの分子は観測される温度に相当するエネルギーで回転しながら飛び回っている。圧力を感じたりするのはそのためである。


高分子を昨日組み紐で例えたが、この紐1本1本も同様に蛇のようにくねくねと運動している。溶融状態の高分子はあたかもウナギを大量に詰めたバケツの中で観察される光景のようかもしれない。


その温度を下げてゆくと、引っ掛かっているところを外せなくて運動が止められるが、スカスカの部分では引っ掛かるところが無いので運動状態をとることが可能だ。実際にぴくぴくと運動している。


多数の組み紐をくちゃくちゃに手の中で揉み床に放り投げてできたときに密度の高いところとスカスカな低いところができる、という認識は重要である。実務で遭遇する品質問題の多くはこの構造を想像できるかどうかで対策の考え方が異なる。


金属やセラミックスなどの無機材料でできる非晶質構造は球を積み上げたような構造だから、その非晶質状態に高分子ほど大きな密度分布はできない。


無機材料の非晶質構造には2種類あり、ガラス転移点を持つ非晶質構造とガラス転移点を持たない非晶質構造である。これは組成により変化するが、前者はガラスと呼ばれる。すなわち無機材料ではガラスとなる組成とガラスができない非晶質構造の組成が存在する。


ガラスができない非晶質構造を溶融後にゆっくり冷却してゆくと結晶質構造が現れる。また、ガラス構造をとる無機材料でも少し組成がずれるとその構造から結晶を析出し、結晶構造とガラス構造に分離する。


無機材料では、ガラス構造をとる組成と結晶構造をとる組成がある、とおおざっぱに材料を捉えることができる。そして無機材料の機能は主に結晶構造が発現し、それが活用されている。


アモルファス金属という非晶質の機能性無機材料も存在するが、市場で活用されている機能は結晶由来の場合が多い。そしてガラス以外の非晶質無機材料は、急冷条件で製造されている特殊な材料である。


ゆえに無機材料では、結晶構造の機能がまず重要となってくるが、高分子材料の非晶質構造は皆ガラスであり、この構造の理解が重要であるにもかかわらず、形式知では無機材料と同様に結晶について研究が進み、高分子の結晶はラメラと呼ばれる分厚い板状の結晶子の集合体である球晶が基本という体系ができている。

カテゴリー : 一般 高分子

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