2021.11/18 高分子材料のツボ(3)
高分子材料の構造において密度分布のある非晶質構造をイメージできるかどうかは重要である。無機材料では、結晶で構成されている部分(結晶相)と結晶以外の非晶質な部分(非晶質相)を考える。そして非晶質相にはガラス転移点を持つガラス相とそれを持たない非晶質相に分かれ、結晶相とガラス相に関する研究が進んだ。
無機材料を学ぶときに基本となるブラベイ格子をまず暗記させられる。これは必ず無機材料の専門試験に1問関係する問題が出てくる。ブラベイ格子とともに群論をすぐ独学できると無機材料が得意科目となる。
無機材料では、まず結晶構造を熱力学とともに理解し「暗記」できれば試験で70点以上を確保できるが、高分子材料では、このような手堅い勉強方法が無いので難しく感じる。
学習が難しいにもかかわらず、50年近く前の高分子の授業では、教科書に一言出てきたフローリーハギンズ理論を説明せよ、と言う問題に30点も割く試験問題で単位を判定するお粗末な授業だった。追試の学生の多いことを厳しい指導と勘違いされていた先生がいた。
このようなテストを経験すると興味があったとしても高分子材料を扱う仕事に進まなくなる学生も生まれる。無機材料の方が高分子材料よりも簡単だという錯覚になる。確かに両者を真剣に勉強してみると形式知が体系化されている無機材料の方が易しいが、友人が患ったような高分子アレルギーを生み出す弊害も考慮する必要がある。
高分子材料では、特に実務を行う時に、と限定すれば、ガラス構造(非晶質構造)の理解が重要となってくる。しかし、この方面の形式知は無機材料よりもお寒い状況である。
フローリー・ハギンズ理論の対象としている相溶という現象も相溶と相容があり、という説明が書かれている教科書がある。このような教科書ではミスプリントが無いことが前提となるが、校正でサンズイを見落とすことは頻繁に起きるので、読者の頭の混乱を招く。
頭を混乱させる相溶と相容を区別することがどれだけ重要かは知らないが、いずれの現象もガラス相で起きる。また、可塑剤や難燃剤など高分子材料に機能を与えるために添加剤を混ぜるが、このときの添加剤もガラス相に存在する。ゆえに高分子材料ではガラス相の理解が重要となってくるが、乏しい形式知ゆえに経験知が重要となってくる。
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