2021.11/30 高分子材料のツボ(15)
40年以上前に化学系の学部で学んだ高分子科学は重合反応が中心で高分子物性論の授業が無かった。おそらく今の化学系の学部ではOCTAの話なども出てくるのではないかと思う。OCTAでは、高分子の分子1本からの積み上げでシミュレーションを行っている。
20世紀末に分子1本のレオロジーに関する研究報告を聞いた。当時、ダッシュポットとバネのモデルによる粘弾性論が破綻し、新しいレオロジーについて議論が活発化していた。
新入社員のときの指導社員はレオロジストであり、ダッシュポットとバネのモデルで粘弾性解析を行うのを得意としていた。電卓で微分方程式を解かれている姿はかっこよかった。
その指導社員が自分の行っている方法はもうすぐ学問ではなくなる、と予言されていた。その20年後高分子のレオロジーに関する研究ではダッシュポットとバネのモデルが時代遅れとなった。
しかし、高分子材料を設計するときにこのダッシュポットとバネのモデルを頭に描くと便利なことが多い。特に粘弾性試験機で測定されたデータを理解するときには、このようなモデルは重宝する。
高分子材料の表に現れる物性は、分子1本づつの積み重ねの結果であるが、力学物性の場合には高次構造が関係している場合が大半である。するとダッシュポットとバネのモデルでとらえた方が理解しやすくなる。
もっとも、今の若い人は大学でダッシュポットとバネのモデルを学ばないだろうから、意味のない話ではある。しかし、経験知としてこのモデルは大切にした方が良いと思っている。
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