2021.12/21 マテリアルインフォマティクス
1980年代に日本で始まったセラミックスフィーバーは瞬く間に世界に広がり、驚いたクリントン政権はナノテクノロジーを国策に打ち出した。さらにバイオテクノロジーまでも始めている。
これが、ポリ乳酸などのバイオポリマーが普及し始めたきっかけだが、普及まで20年以上かかっている。すなわち材料技術が社会に普及し一般化するためには、長時間かかる。
80年代に起きたセラミックスフィーバーは2度目のフィーバーであり、この二十年前にはペロブスカイトを中心にしたプチセラミックスフィーバーが起きている。当方が小学生の頃だったので村田製作所の名前を基に記憶している。
今世間では表題の怪しげなブームが起きている。また、大学ではデータサイエンスに関わる学部の新設ラッシュらしい。すなわちマテリアルインフォマティクスとは世間にあふれている大量のデータについてAIを使ったデータマイニングにより新しい現象なり機能なりを探ろうというものだ。
これは科学と言うよりも技術である。当方はAIを使用していないが、データマイニングにより電気粘性流体の実用化を成功させ、その結果担当者からFDを壊されるなどの嫌がらせを受けて転職している。
電気粘性流体について科学的な情報が無く、研究開発競争が行われていたところで、データマイニングでモノを作り上げてしまったのである。真面目にコツコツ数年間アカデミア以上の研究所で研究をしてきた連中が腹を立てたのは理解できる。
このデータマイニングと言う手法は、早い話が、たくさんデータを出してからそれらのデータを俯瞰して考えましょう、というような手法と捉えることもできる。もっと下賤な言い方をすれば、とりあえず実験をやってみてから考えましょう、という体育会系のノリである。
もともと体を動かしたくない頭でっかちな研究者は、仮説を立案し、その仮説が正しいか必要最小限の実験をコツコツ行いながら考えてモノを開発しようとする。この科学の方法を完璧に行うと否定証明を行うことになる危険性を哲学者イムレラカトシュは指摘している。
実際に電気粘性流体を数年研究開発してきたスタッフは否定証明でモノができないことを証明していた。当方はそれを一晩300個ほどの実験を体力に任せ行い多変量解析してモノを作り上げただけである。30年前の出来事だ。
当方は自分の手を動かしてデータを集めたが、今のマテリアルインフォマティクスは頭を動かしているだけらしい。それも自分の頭を動かし過ぎると疲れるのでAIに大半を任せて椅子に座って研究している。
これで良い研究成果が出たならやはり立腹する人が世間に出てくるだろう。しかし、当方は拍手を送りたい。なぜなら、材料開発について温故知新をAIにやらせ、もう人間は体力勝負の新素材開発業務から解放されるからである。
当方の材料開発成果はすべて過重労働の成果である。今の時代、過重労働を隠蔽化していると社会問題となる。昔は、何もかも隠蔽化されても許された時代のように感じている。ゆえに転職以外に身を守る手段が無かった。
肉体派のデータサイエンスには暗い思い出しかないが、それでもこの手法を30数年のサラリーマン時代使い続けてきたのは、コンピューターの進歩に未来を感じていたからである。
高純度SiC製造プロセス開発は、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂をひたすら朝から晩まで混合し続けた成果であるが、この時はラテン方格を用いて効率をあげている。
成功すると信じることができたのは体力に自信があったからである。わずかな知力と鍛えられた体力でマテリアルインフォマティクスを推進すると必ず成果が出る、と確信している。
新素材開発は、やってみなければわからない世界である。これを科学的に行うと否定証明を行うような愚行となる場合もある。だからマテリアルインフォマティクスが重要となってくる。
ただし、それは新しい視点により集められたデータに対して使われた時に新しい材料の未来が見えてくる。過去のデータを使うならば温故知新である。この時不易流行の精神を理解できる経験知が重要となってくる。
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