2022.07/06 暗黙知
知には、形式知と経験知、暗黙知の3種があり、科学にもとづく知は形式知で義務教育から始まり大学までの教育で伝承される。経験知の一部もこの教育期間に学ぶことになるのだが、それらは形式知に近いか不偏化された知だけである。
職人の生み出す製品には経験知や暗黙知が活かされている。これを見て、知を見出せない人は経験知や暗黙知を学ぶときに苦労する。美しさは芸術の機能であり、それを実現するためにも知が必要である。
美しさには、それを支える知が存在する。美しさだけにうっとりしていてはだめで、その基盤となる知まで鑑賞できるようになりたい。「何でも鑑定団」で「いい仕事をしている」という表現が飛び出すが、美に隠された知の誉め言葉である。
形式知が定理や公理、厳密化に必要な定義などにより厳格に管理され、形式知を学んだ誰でもそれに従えば伝承できるが、経験知や暗黙知の伝承はそれを身に着けている誰でもができるものではない。伝承するためのスキルが必要になる。
このコロナ禍の二年間で音楽の理論を解説した書籍を4冊購入した。面白いのは、6割ほどは同じことが書いてあるのだが、4割については説明の仕方が微妙に異なる。
音楽の理論書ではないが、風変わりなのはJoePassの教則本で音楽理論の説明が最小限書かれ、文章は少なく楽譜が大半である。彼のギター教則本を3冊ほど集めたがどれも同じようなものだった。
インターネットには彼の教則ビデオが公開されており、3種類見たところ、書籍と同じ説明を語っているだけで演奏が多い(注)。
彼の教則本やこれらのビデオから疑問点が多数出てくる。しかし、楽譜練習や彼の演奏を聴いているとその疑問点が少しずつ解消するから不思議である。
音楽の理論を読んで論理としてそれを理解できてもギターが弾けるようにはならないが、理論の説明が少ない彼の教則本では1ページ1ページの練習に時間はかかるが、何となく少しずつギターの腕が上がるような錯覚になる。
(注)JoePassの教則本は、この教則ビデオの焼き直しのような内容である。ビデオは英語で語られているが、演奏を聴けば英語の理解が容易にできる。
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