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2022.08/03 情報化時代の技術開発(2)

雲の上の職場に配属された翌年あたりからセラミックスフィーバーが起きている。これは、その後ナノテクノロジーブームへつながるイノベーションだが、このフィーバーでセラミックス分野の形式知は大きく進歩した。


この変化は、1970年代に書かれたキンガリーによる無機材料の教科書を読むと理解できる。この時の教科書では、1/10程度は物理化学的な内容で構成されていたが、残りは、十分体系化されていないセラミックス工学の内容だった。


ゆえに大学院の2年間在籍した講座の研究スタイルが帰納的でありながらも電子顕微鏡写真観察が主体だったため、大学4年時に1年間学んだ有機合成化学と比較して職人芸的な研究に見えた。

セラミックスフィーバーはこの職人芸的な教科書の内容を書き直すに十分なイノベーションを起こしている。また、窯業協会が日本セラミックス協会へと名前を変更している。


セラミックスフィーバーはエンジニアリングセラミックスが主役として起きたので、力学物性、とりわけ材料の破壊に関する学問が進歩し体系化された。


ワイブル統計も導入され、データサイエンスとしても研究が展開されている。例えば線膨張率データは結晶方位ごとにデータが採取しなおされた。また、略称JANAFと呼ばれる熱力学データ集(ビッグデータである)は、反応予測に用いられ専用のソフトウェアーも開発されている。


セラミックスフィーバーでは金属材料でも材料開発手法のパラダイムに変革が起き、セラミックス超伝導体では、金属まで含めた結晶系からの予測が可能なシミュレーション研究も行われている。


また、当方は無機材質研究所でマイコンを用いてSiCスタッキングシミュレーションプログラムを開発し、すでに大型コンピューターで実施されていた20層までの計算結果の続きを計算している。


ゴム会社では、大型コンピュータを活用したデータサイエンスによるタイヤ材料設計が試みられ一定の成功をおさめていたが、社外に公開されなかったので、その成果がセラミックスほどのイノベーションを起こすまでには至っていない。


1990年以降始まった第三の波による情報革命でデータサイエンスが注目され始めたが、セラミックス分野ではそれがイノベーションの一翼を担い、イノベーションを加速させた。


セラミックス材料ではシミュレーション技術を含むデータサイエンスにより新材料発見の成果も出ている。また、当方の学位論文にも一部記載しているが、SiC(6H)の結晶方位が異なると線膨張率に大きく異方性が出る問題について結論が出ている。


それは、シミュレーションで示されたスタッキングの状態からから予測されること、3C結晶では異方性が出ないことなどが確認された。セラミックスではデータサイエンスで研究が進むとともに新材料の開発に成果を出している。

カテゴリー : 一般

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