2022.10/06 配合と物性との関係
材料の配合とそれにより製造された成形体の機能が1:1に対応していると誤解している技術者や研究者は多い。
国家プロジェクトの紹介をしているホームページにもこの誤解による説明が書かれたりしており、日本の将来の科学技術を心配する声が最近聞かれたりしているが、すでにそれが始まっていることに気づかされる。
国民の税金が使われているようなプロジェクトの説明でこのような誤解を見つけると税金の無駄使いと感じるのは当方だけだろうか。
さて、配合とそれにより作られた成形体の物性とが1:1に対応していない事例は、無機材料でも有機材料でも存在し、その原因は、プロセスの寄与を無視できないからだ。
この理由ゆえに、マテリアルインフォマティクス(MI)を行う時に注意を要する。深層学習では各ニューロンとの間で重みづけを行いデータマイニングを繰り返すことでこの値が変化してゆく。
プロセス因子の全く入っていないデータで学習させられたAIでは、学習のたびにいつまでも重みづけが変化することも予想される。
プロセス要因は配合因子よりも小さいからそのようなことは起きない、という意見を聞いてさらに材料科学の現状を心配になった。プロセス要因が配合因子より大きいのか小さいのかはいまだ不明であり、高分子材料については全く無視できない。
無機材料と有機材料の両者を研究してきて高分子材料研究の難しさは、このプロセス要因により現象が大きく変動するためとさえ感じている。
例えば、PPS/6ナイロン/カーボンの配合では、プロセスが異なると全く異なる高次構造のコンパウンドが得られる。そしてこれらのコンパウンドで押出成形をおこなうと力学物性も電気物性も異なる半導体ベルトが得られる。
PET/PEN/その他の高分子という配合でも同様にプロセス因子が変動すると異なる高次構造となり、その成形体の力学物性は配合が同一でも変化する。
すなわち、高分子材料の成形体の物性は、配合因子だけで決まらず、プロセス因子の影響を受ける。これは、その材料の成形体の高次構造と物性との相関が強く表れるためで、高次構造は配合因子とプロセス因子の両方の影響を受け、その寄与率あるいは重みはよくわかっていない場合が多い。
カテゴリー : 一般
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