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2022.11/09 問題解決のパラダイム

日々の問題解決のため、ロジカルシンキングというセミナーが1980年前後に大流行している。日々の業務を科学的に遂行しようとする戦後の科学教育の効果や、研究所設立ブームがひと段落したときで論理的にビジネスを進めようという潮流にうまく適合していた。


研究所では、科学的に研究を進めることが当たり前で、企業からも学会発表が競うように行われた。しかしバブル崩壊後、企業からの学会参加は減少の一途である。


ところで、問題解決法には科学の方法以外にもあることが忘れ去られたようだ。当方は非科学的方法でゴム会社で高純度SiCの技術を事業化し、その事業は今でも続いているが、科学の方法でまとめなおして学位を取得している。


当時の研究所では非科学的な問題解決法は受け入れてもらえなかったのだ。ビジネスの観点で考えれば、非科学的であろうと問題を解決することが重要で、科学的に業務を進めて問題解決に失敗しても意味がない。しかし、ゴム会社の研究所は、モノを作ることよりも科学的であることが重んじられた。


例えば、電気粘性流体の耐久性問題では否定証明により、問題解決できないので添加剤が入っていないゴムを開発すべきという結論が出されている。


ゴムを知っている人から見れば大変間抜けな結論だが研究所のトップはこれが素晴らしい研究だと立ち上がったばかりの高純度SiCのJVを止めてでも添加剤が入っていない世界初のゴム開発を進めよと命令している。


話はそれたが、科学的に完璧な証明は否定証明以外にない、というのはイムレラカトシュの名言であるが、科学的に問題解決を進めたときに、科学にとらわれると否定証明に向かうという問題に気づいていない人は多い。


科学は論理学の誕生とともに成立したとマッハは著書の中で述べており、論理学誕生以前のニュートンの研究でさえも非科学的だと解説している。ここで注意しなければいけないのは、非科学的方法であっても万有引力の法則を見出してニュートン力学という分野を開拓している事実である。


最近の学校教育では教えなくなったユークリッド幾何学は科学誕生よりもはるか昔に生まれている。すなわち人類は科学誕生以前に非科学的方法で日々問題解決してきたので、進歩してきたのだ。


ただ科学誕生により産業革命が起き、技術が加速度的に進歩したので、科学の方法というパラダイムが重宝されただけであることを知るべきである。


この数年アカデミアではマテリアルインフォマティクス(MI)が流行し、慌ててこれを導入している企業が多いと思われるが、MIで問題解決するというのは、昔ながらの非科学的パラダイムであることに気がついているのだろうか。


コンピューターという道具を使うので最先端ではあるが、そのパラダイムは従来非科学とされた技術的パラダイムである。不易流行の境地を知ればそれが見えてくる。


AIを用いないデータマイニングもできるし、コンピューターさえも使わずデータマイニングは可能で、当方はグラフ用紙一枚でデータマイニングに挑戦し新たな多成分ポリマーアロイを開発している。


データサイエンスは1970年代に生まれ、その概念を拡張しつつ発展し現在に至るが、電気粘性流体の事例で紹介したような間抜けな研究をしないように心掛けたい。


ビジネスでは科学的であることよりも正しい問題を解決し仕事を前に進めることが一番大切である。科学的問題解決に行き詰まったなら非科学的方法も試してみるとよい。弊社では科学から非科学まで全ての問題解決パラダイムを指導している。

カテゴリー : 一般

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