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2022.12/26 高分子の難燃性(9)

リンの難燃効果は、燃焼時にオルソリン酸が生成され、オルソリン酸の脱水作用により炭化が促進されて、それが空気を遮断する被覆効果を発揮し現れる。1970年代から80年代にかけてこの機構に関する論文が多数発表され、形式知として教科書に掲載されている。


ところが、オルソリン酸の沸点は240℃前後であり、燃焼時に揮発している可能性がある。1979年に入社して9カ月後にポリウレタンの難燃化テーマを担当できたのは、最先端の研究を行う機会であり幸運だった。


今ならばパワハラセクハラ公私混同など問題の多い上司であっても毎日が楽しかった。当時「趣味で仕事をやるな!」と上司から再三叱られた記憶がある。上司は、研究をまじめにやるように勧めてきたが、研究というものがどのようなものか理解していない方だった。


研究とは何か新しいニュースを現象から見出すことだと大学4年の時に指導教官から教えていただいた。当時この方から頂いた大阪大学小竹先生の講義録のコピーにそれが書かれていた。


上司は、論文で面白いと思ったことをそのまま実験してみろ、それが研究だと言ってきた。科学の研究とは、論文に書かれていることの再現性を確認することだと誤解していたのかもしれない。


言われたことの結果とそれを発展させた面白い結果を出すと、「趣味で仕事をするな」とよく言われた。指示されたことだけやれとも言われていたが、指示されたことが的外れな実験の時には、その実験結果と新たな現象を見出すための実験結果とを報告していた。


これが上司のツボにはまった時には、「指示が正しかっただろう」と悦に入るようなおもしろい上司だった。世界初の難燃化技術という指示に対して、世界初の反応型ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の合成に成功した時には、大変喜ばれた。


ホスファゼンは低発煙の難燃剤、と書かれた論文を見つけてきて、ここでは添加型で実験をしているので反応型でも低発煙かどうか確認しろ、と言って倉庫にあるアラパホメーターを使うように指示してきた。

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