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2023.01/06 仕事は貢献に軸足を置くと成功する

製品化まで半年しかない状況で、歩留まり10%以下の押出成形プロセス立ち上げのリーダーを引き受けた。コンパウンドに問題があり、それを解決すれば歩留まりを改善できることがヒューリスティックな解(注1)として得られていたからである。


コンパウンド供給メーカーに協力を仰いだところ、「素人は黙っとれ、やりたければ自分でコンパウンドを作れ」と言われた。コンパウンドメーカーにしてみれば、半年でコンパウンドラインなど建設できない(注2)、と分かっていたからである。


上司と相談し、当方の権限をすべて部下に委譲し、半年で当方のアイデアを実現するコンパウンドの生産プロセス建設のための準備および社内調整を、コンパウンドメーカーに協力を断られた日に行っている。一日でも無駄にできなかった。


上司であるセンター長は、予算面のバックアップを約束してくれたが、人材は当方が集めなければならなかった。コンパウンディングの基盤技術など無い会社(注3)なので、中途入社で1名採用し現場で退職が近いということで暇にしていた有能な技能員を1名確保して、当方も現場に立つ覚悟を決めプロセス開発を行っている。


やればできるもので、半年後には押出成形の歩留まり90%以上を実現できる世界初のカオス混合プラント生産ラインがアジャイル開発により完成した。ただ半年間は眠る時間も休みも返上し(注4)作業者の一人として活動している。


幸いにも部下の2名も優秀で「貢献」を理解している人材だったので、開発はおもしろいように進んだ。研究開発人生で最も短期間で技術を実用化(量産開始できた)できた開発成果である。しかし、当方の役割からその仕事は評価されることはなく、すべてがまさに貢献だった。ただし部下の評価は100点以上をつけている。


マネジメントとは人を成して成果を出すことだが、緊急事態にはすべてを放り出して貢献に焦点を合わせ業務を推進すると周囲の協力が得られる(注5)。転職して20年勤めた会社で最も気持ちよく仕事ができた思い出である。部下の課長二名には迷惑をかけたがーーー。


(注1)この手法について弊社のセミナーで解説している。

(注2)生産用の二軸混練機の製造には1年以上かかる。根津にある有名な中小企業に協力をお願いし、中古機を集めて埼玉にあるその工場で組み立てた。静岡にあるケミカル工場にプラント建設が決定さえた後それを運び込んでいる。木下藤吉郎の一夜城と同じ方法である。蜂須賀小六と藤吉郎のように信頼関係が重要である。

(注3)ゴム会社の新入社員時代の3か月間、混練の神様と呼びたくなるような指導社員からカオス混合については学んでいた。

(注4)毎週東京に帰っていたのだが、出張旅費を申請していない。労働時間数から過重労働となるからである。新幹線代は自腹であり、報われないどころか個人的に大赤字の業務だった。

(注5)ただしこれは企業風土にもよる。当時二つの会社の統合が行われていた時で、皆が統合の成功を目指していたタイミングの良い時だった。サラリーマン最後に気持ちの良い風土で仕事ができたので余韻が冷めないうちに2010年に早期退職する決心をしたのだが、PETボトル再利用の環境対応樹脂を開発するために、それが1年延びて2011年3月11日が最終出社日となり、一晩誰もいない事務所で過ごすことになった。

カテゴリー : 一般

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