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2023.01/11 イノベーション

製品化まで半年という状況で基盤技術など無かったコンパウンド製造工場を立ち上げるという仕事は、組織に大きなイノベーションを引き起こす。


まず、アジャイル開発というDXの進展で一般的になりはじめた開発手法が受け入れられるかどうか。さらに外部のコンパウンドメーカーも知らないカオス混合技術が成功するかどうかという心配。その上フローリー・ハギンズ理論に反するような現象をプロセスに導入しようという非科学的思考。


これ以外に、コンパウンドは一流コンパウンドメーカーから購入するのが一番確実と根拠なく信じてきた材料調達の考え方にもイノベーションを迫る。


そもそも一流コンパウンドメーカーでどうして歩留まりを改善できるコンパウンドを製造できないのか、という疑問を解消しなければ、どこの組織であってもコンパウンド工場を半年で立ち上げるというチャレンジを無謀と考えるだろう。


半導体無端ベルトの押出成形の成功は、半導体用高純度SiCの事業化で学んだ企画推進ノウハウを十分に発揮できた。


どんな小さな成果でも従来と異なる新技術の実用化では、組織で大なり小なりイノベーションを引き起こす。ゴム会社でセラミックス事業を起業することがどれほどのイノベーションを引き起こすのか若い時には考えもしなかった。


しかし、半導体無端ベルトの押出成形では、イノベーションの大きさを十分に考慮し、組織内外の調整にまず全精力を費やした。特に身内には反感を買わないようにコンパウンド開発の人材を新たに外部から採用している。


企画は良かったけれどうまくゆかない原因の一つに組織内外の協力が得られず、失敗する例が日本では多いと聞いている。また、当方もその体験をしており、企画を成功させるために当方自ら転職するような選択までしなければいけなかった。


カオス混合プラントの建設では、もしセンター長が反対しておれば実現しなかった。また、品質保証部の協力が得られなければ、半年という短期間にQMSを満たすような開発などできなかった。


また部下の課長がへそでも曲げてコンパウンドの性能評価計画を1日でも遅らせたなら失敗していたかもしれない。大きなイノベーションを伴う技術開発では、周囲の協力が不可欠であるが、そのとき関係者が皆同じゴールの成功を喜べるイノベーションとなるように推進する努力が重要である。

とりわけ日本では、当方の転職事例だけでなく、最近でも忖度自殺が財務省であったように、正義不正義などお構いなしの社会における組織であることを充分に認識してイノベーションを進めなければならない。これが意外と知られていない(注)。50年以上前からドラッカーが誠実な人物をリーダーにすべきと言っていた背景でもあり、日本だけというよりも人類の問題かもしれない。

(注)著名人の日本人論におけるリーダーの扱いには、ドラッカーのような厳しい視点が欠けているような気がする。誠実でその地位にふさわしい人がリーダーとなっていないような組織というぐらいの気持ちでイノベーションを行う必要がある。

カテゴリー : 一般

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