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2023.01/13 混練のデータ

ゴム会社に入社し10月に研究所へ配属され樹脂補強ゴムの開発を担当していた時に、先輩社員から混練は楽しいでしょう、と話しかけられた。


これは皮肉を込めた言葉だったのだが、楽しいというよりも毎日疑心暗鬼の生活です、と正直に応えている。初めてロール混練を実験していた時で、指導社員から渡されたサンプルと同一配合のゴムを目的の物性が出るまで混練の練習をするのが課題だった。


先輩社員はその課題を知っていて話しかけてきたのである。その先輩は昨年まで大変な研究を担当していた、と言われた。何が大変だったのか尋ねたところ、主幹研究員の理論通りのデータを出すことが目標だった、という。


捏造が許されないので、予測式に合致するデータが出るまで実験を繰り返しやらされたという。その時どうしても予測式に合致するデータが出なかったので、混練条件を変更して実験したところ、予測式通りのデータを出すことができたという。


実験している最中に何度も捏造の二文字が目の前に現れたが、技術者は捏造をやってはだめだと、先輩社員はまっとうな説教を始めた。


やや疲れ気味なイメージの方だったが、説教は精神論としてまともだった。誠実真摯な姿勢で実験をやってこそ最高の品質で世界に貢献できるというような内容だったが、データの捏造をやるぐらいなら実験条件を変えて実験を行い、自分の欲しいデータを出した方が良い、という一言には少し疑問を持った。


しかし、当時ロール混練の練習をしている目標は、まさに指導社員が欲しいデータと言ってよいものだった。ただしその目標は指導社員が予備実験で出されたデータだった。


指導社員が予備実験で出されたデータを当方が出すことができない、と言う事実は、混練技術の未熟さを示すものだと思っていたが、やがて混練技術の科学で解明されていない奥深い世界であることに気がついた。


仮説に基づく実験で仮説に入っていない因子を変えて都合の良いデータを出す行為と捏造とどこが違うのか、という疑問を持たれる方がいるかもしれないが、前者は実験事実という説得力がある。

カテゴリー : 一般

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