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2023.01/17 非平衡現象(2)

材料技術者としてのスタートにおいて混練の神様と呼びたくなるような指導社員の指導を受けることができて幸運だった。指導社員はレオロジーが専門であり物理系の技術者と言える。化学系の技術者はゴムの緩和時間など意識しない人が多い。


力学的緩和以外に電気でも緩和現象が存在する。電気の場合には電子のキャリアとその環境に依存した緩和時間をとる。高分子材料の導電性測定をするとゆっくりと抵抗が低下する現象(抵抗が上がる場合もある)に出会う。


ISOの抵抗測定法には、電圧印加後一定時間経過してから抵抗測定をするように書かれている。ゆえに高分子材料の電気特性については、どのように計測されたデータかどうかが重要になってくる。


50年ほど前に高分子の緩和現象の一つとして誘電緩和について活発に研究がされた時代があった。高分子材料では、あらゆる物性がサンプル製造直後から変化することを知っておいた方が良い。


すなわち、プロセシングにより高分子材料の内部に歪が発生するが、これが十分に緩和し平衡状態になるまで物性が安定しない、と言うことを忘れないでいただきたい。


緩和時間については、力学的な測定法と電気的な測定法で異なる値が得られるが、これは観察している対象が異なるためである。また、高分子の側鎖と主鎖それぞれについても異なる。


このあたりの物性に対する「感覚」あるいは「勘所」が、樹脂技術者とゴム技術者で異なる場合がある。樹脂とゴムでは、室温において前者はTg以下の状態であるが、後者はTg以上の状態の物性を示していることを忘れてはいけない。


TPEは悩ましい材料であるが、LGBTなど多様性が叫ばれている現代においては、昔より抵抗なく接することができる。40年近く前にはポリウレタンを弾性体として扱いたくない人がいた。


ただし、ゴムのように硫黄で架橋しなくてもウレアの凝集部分が架橋点となり、ソフトセグメントの存在で弾性を示す軟質ポリウレタンは、立派な弾性体である。そしてソフトセグメントのTgは室温以下である。


ソフトセグメントの存在しないポリウレタンは、硬質ポリウレタンで樹脂だった。硬質ポリウレタンと軟質ポリウレタンでは、合成後の物性が安定するまでの時間が異なっていた。


加硫ゴムの研究とTPEの研究、そしてセラミックスの研究まで経験してみると、高分子材料はその物性の扱いが難しい材料と感じている。

カテゴリー : 一般

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