2023.01/18 ツイッター社の混乱
イーロンマスク氏が度を過ぎたリストラを行ったために、ニューヨーク本社では悪臭が漂っている、という。原因は清掃の外部発注までリストラしたため、とか。
その結果、トイレだけでなく室内にもゴミが散らかり、モラールまで落ちてきたという。このようなニュースが流れるのは、現場のマネージメントまで崩壊しているからだろう。
ゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げたときも大変だった。2億4千万円の先行投資が決まり、ファインセラミックス研究棟の起工式の日に倒れ入院していたリーダーが竣工式の日に胃がんで亡くなった。
その後人員が補強されたが、本部長が交代するや否やテーマの見直しが行われ、管理職が2人から一人となり、担当者も5名となった。
やがて、管理職もリストラされ当方一人となって、さあどうしよう、と本部長に相談したら営業をやれという。高純度SiCの粉末が売れるかどうか自分で確認しろ、と言われた。
企画検討会で管理職に「女学生より甘い」という迷言を発した厳しい本部長だったが、指示と判断はいつも的確であり、当方にとって厳しい命令だったが反論せず納得して従っている。
その結果、住友金属工業とのJVについて社長印を頂き(注)、立ち上げることができたのだが、本部長が交代したところで、電気粘性流体の耐久性問題解決のため、加硫剤も老化防止剤もすべての添加剤が入っていないゴムを開発することになった。
その結果どうしたかは、すでにこの欄で書いているが、一人でファインセラミックス研究棟で仕事をしているとき、何も問題解決しなければ、ツイッター社の現状と同様になるところだった。
一人になることが分かった時に、大掃除をしている。そして、自分が行動する範囲の必要なところにPC9801を配置している。当時LANなど無かった時代であり、FDを持ち歩きデータ移動していた。
ゴミの原因となる紙の使用を辞めた。そしてトイレは他部署のトイレを使用するなどファインセラミックス棟を汚さないことを心掛けた。コンピューターの出力も研究所の共有プリンターを使っている。
ペーパーレスと徹底して他部署のインフラを使用する工夫により、ファインセラミックス棟の掃除の負担はじめ人件費以外の予算を減らしたのだ。営業結果は直接本部長に報告していたので、わざわざまとめる必要は無かった(余分な報告は不要と言われた。)。
売れたかどうかだけで十分だった。ゆえに住友金属工業とのJV立ち上げも迅速に決まり、半導体治工具事業へまっしぐら、というところで本部長が交代してFDを壊されるようになった。そして転職である。
ファインセラミックス棟はツイッター社本社のようにゴミで溢れることは無かった。事業は当方が転職後も続き、住友金属工業が新日鉄住金となった時に高純度SiC事業はゴム会社で継承されることになり、事業開始から30年続き、愛知県にあるMARUWAへ事業譲渡されている。
ゴム会社で異色の新事業「高純度SiCの半導体治工具事業」は、日本化学会化学技術賞はじめ数々の賞を頂いている。この事業は、「女学生より」と書けない時代となったが、「女学生より甘い」と言われないように仕事をした成果である。すなわちU本部長のマネジメントの成果である。
(注)この時の契約書は、本部長が交代するというので当時閑職だった管理職が起案し、当方が転職後はその方がリーダーとなり事業を推進している。この方は、一人になった当方の面倒をよく見てくれて、転職する相談をしたときには、ゴム会社の子会社をいくつか紹介してくださった。興味を持った1社には子会社社長にもあいさつのため出張している。(子会社の紹介がFD事件の答えと知り、U本部長からI本部長に交代したテーマの扱いの変化を知った。臭いものにはすべて見えないようにふたをするマネジメントになった。正しい問題は、FDを壊したりするような他人の業務妨害が起きる風土の是正である。そもそもタイヤ開発部門と研究部門とは当時大きく風土が異なっていた。)。結局ヘッドハンティングの会社が写真会社を紹介してくれて、セラミックス以外の業務、フィルムの開発業務ということで円満退社となっている。円満退社であるが最後まで人事部が押印してくれなかったので年金手帳はじめ転職のための手続きは写真会社へ出勤してから進められた。これもサラリーマンとしておかしな体験で、I本部長に追い出されたようなものである。また、給与明細書を見るとこの年の10月度の年金はゴム会社と写真会社から支払われている。これも消えた年金問題の一例である。送別会も転職後有志による開催で、茨城カントリークラブ1泊2日の豪華なものだった。その結果、転職後もしばらく高純度SiCの業務を手伝うことになった。当方の体験は、恐らく自殺したくなる体験ともいえる。パワハラなどで自殺するニュースが後を絶たないが、死ぬ前に考えていただきたいのが、命をかけて仕事をやったとしても報われない世の中である、と言う事実だ。この高純度SiCの仕事が転職後どのように扱われたのか、あるいは関係者のその後の行動を思う時に、日本のGDPが上がらない原因の一つのように思えたりする。ドラッカーが誠実な人をリーダーに、とわざわざ著書に書いているのは、そのような人がリーダーとして選ばれていない事例が多いためだろう。これは日本社会に限ったことではない。不誠実な人間が風土を悪化させていることは明らかであり、そのために命をささげる、と考えたときにばかばかしい、と思っていただきたい。組織で活動する期間よりも人間の寿命の方が長いのである。誠実に生きることの大切さをドラッカーは指摘しているが、大切というよりも気持ちが良い生き方である。ゴム会社のある管理職の葬儀の連絡を受け参加したが、そこにFDを壊した犯人の出席は無かった。出席すべき人間関係の故人の葬儀に出られない、ということをどのようにとらえるか。この世の幸不幸、楽しみの味わいその他は、自然災害や不慮の事故を除けば、結局人間関係の中の出来事である。家族との交流、友人との交流、職場における交流など様々あるが、血のつながっていない職場における交流は容易に避けることができる交流である。それゆえ、マネジメントによる風土の向上が重要となってくる。かつてハーズバーグの衛生要因は動機づけとはならない、と習ったが、不満が充満してくると良からぬことを考える人がでてくる。結果その人によりモラールダウンする人が出てくるので衛生要因といっても軽視できない。やはり動機づけと同様に衛生要因にもリーダーは配慮すべきである。ゆえにツイッター社の混乱はマネジメントの崩壊と感じた。
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