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2023.01/22 非平衡状態(4)

PPSと6ナイロンのχは0ではないので、フローリー・ハギンズ理論が正しければ、相溶しないはずである。しかし、カオス混合により相溶し、PPS単独よりも透明なストランドとして得られた。


これをもってフローリー・ハギンズ理論を否定するような愚を犯してはならない。この理論は平衡状態の理論であり、カオス混合により得られた透明なストランドはやがて不透明となるはずである。


すなわち、透明なストランドは、準安定状態といってもよい現象で透明になっているだけである。やがてスピノーダル分解し相分離し、不透明になるはずである。ゆえにその不透明になるのを在職中の密かな楽しみにしたのである。


ところが2010年になっても透明なままだった。リサイクルPETボトルを用いた環境対応樹脂の開発を引き受けたために2011年3月11日が最終出社日となった。1年退職を伸ばせば奨励金が減るので損だったが、この密かな楽しみのために1年延ばしている。


帰宅難民となってストランドを眺めていたが、透明度は落ちていなかった。5年以上も相溶状態が続いていたことになる。土井先生の話では、高分子はTg以下でもレピュテーション運動を行っている、という。


この分子運動を信じてストランドを眺めていたのだが、レピュテーション運動が起きていてもスピノーダル分解に寄与しないのか疑問を持った。


退職してすぐに現在の会社を起業したのだが、電子出版がうまくゆかず、赤字続きでこのことを忘れてしまった。またサンプルはすべてゴミ箱に捨ててしまった。


ある日、事務所の移転のため整理をしていたら、PPS/6ナイロンのストランドが一本出てきた。それはひそかな楽しみとしていつも最初に見ていた1本だった。真っ白に変化しており、びっくりした。


さらに驚いたのは、スピノーダル分解して相分離しPPSがおそらく結晶化しているのだろうけれど、靭性が全く変化していなかったことだ。何度折り曲げても手で引きちぎることができなかった。

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