2023.01/23 モチベーションの維持
車いすテニスの国枝慎吾選手がモチベーションの維持を理由に国際ランキング1位のまま引退した。彼の偉大さについて今更書く必要は無いと思うので、彼の引退の弁で語られたモチベーションの維持について述べたい。
何か事を成そうという時に「モチベーション」という得体の知れない因子の果たす役割は大きい。モチベーションとは「動機付け」と訳されたりするが、要するにやる気が起きるかどうかである。
仕事にやる気があるかどうかに関わらずサラリーマンは会社へ出勤して机に向かう。コロナ禍となり、在宅勤務となった時にモチベーションの変化に気づいたサラリーマンは多いのではないか。
上司の顔を見なくてもよくなったのでモチベーションが上がったサラリーマンもおれば、WEB会議となり、逆にパソコンの壁紙と正反対の顔がそこに映し出されたために下がった人もいるかもしれない。
同じ環境変化であっても個人差がその影響として現れるのがモチベーションの厄介なところである。マネジメントスキルにおいてメンバーのモチベーションをうまくコントロールできるかどうかは、管理者の人間性も影響する。
ゴム会社に入社し、9か月後に職場異動し課員全員が少しおかしいと噂していた管理者の部下になった。そこで3年近く高分子の難燃性について研究開発を担当しながら高純度SiCの事業企画も立案していたので、当方のモチベーションは高かった。
ところが年々周囲のメンバーのモチベーションは下がる一方で、3年後には年末の管理者との面談に用いるカードに、当方以外の全員が「この課を出たい」と偶然書いてしまう事件が起きている。
この時当方はそのカードに「無機材研留学が決まったので企画を成功させたい」とモチベーションの高さが溢れた内容を書いていたので、管理者は当方を面談のトップにして質問してきた。
ただし、その内容は当方についてではなく、グループ内の犯人捜しのような質問ばかりだった。グループ内の雰囲気も分かっていたので、質問の回答として当たり障りのない内容を答えていたら当方のモチベーションの源泉について聞かれた。
おそらく管理者の努力の結果という回答を期待されての質問と想像したが、犯人捜しの内容の後の質問だったので、その回答に苦慮した記憶が残っている。
ここで注意しなければいけないのは、モチベーションなるものが第三者の努力の結果と考えている管理職がいることだ。確かにモチベーションは第三者の働きかけにも影響を受けるが、個人の資質や人生観など属人的要素が大きい、と考えた方が良い。
人格のおかしい管理者にやりがいを鼓舞するような言葉をかけられても誰もモチベーションなど上がらない、と思う人もいるかもしれない。しかし、高分子の難燃化技術について、1960年末から研究が活発となり、1980年代には、ほぼその手法が確立された歴史も影響していた。
すなわち、1980年中ごろには1970年代に比較して魅力の落ちた研究テーマとなった。研究者に新たな視点を見出す能力が乏しければ、つまらない仕事に見えたかもしれない。
当方は高純度SiCの前駆体という視点で3年間テーマを眺めてきたので、燃焼時に無機高分子(ガラス)を生成する難燃化技術というコンセプトでテーマを運営しモチベーションを落とすことなく成果を出していた。
モチベーションとは、まずその本人の考え方や人生観などの属人的要素に大きく依存するので、国枝選手が自己の年齢とテニスというスポーツで要求される能力とに悩んでいたことを想像できる。インタビューの映像には満足感が溢れていた。
カテゴリー : 一般
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