2023.02/10 高純度SiCの製造方法
高純度SiCの製造方法は、ゴム会社で1980年に企画されたホウ酸エステルとリン酸エステルを併用して高分子を難燃化する技術として,そのシーズが生まれている。
ポリウレタンマトリックスへ均一に分散したホウ酸エステルとリン酸エステルが燃焼時に反応し、アモルファスボロンフォスフェートが生成する。それが燃焼面にチャー生成を促してポリウレタンを難燃化する。
難燃化技術であるが、高分子からセラミックス(ボロンホスフェート)を製造する方法にも転用できるこの技術は、始末書がきっかけで生まれている。この経緯はこの欄で以前書いたので省略するが、高純度SiCの企画はさらに紆余曲折を経て事業化された。
セラミックスフィーバーのさなか、ゴム会社創立50周年を迎えた。記念論文の募集があり、そこでこの企画を発表したり、昇進試験にも書いたりと、とにかく企画が採用されるまで粘り強く、提案を続けている。
社長方針として出された3つの新規事業、ファインセラミックス、メカトロニクス、電池の一つとして、研究所で最適なと考え提案したのだが、その過程で珍ドラマがいくつか生まれている。
珍ドラマの1シーンである1週間のチャンスを利用して、高純度SiC製造方法を完成した。今でもほとんどこの時の発明と変わらない方法で生産されている。4日間の実験で黄色い粉ができたのだが、その詳細はもう少し後で書きたい(注)。
これは、ゴム会社の研究所の許可も得て実施した実験である。許可が得られていたので、フェノール樹脂とポリエチルシリケートの前駆体はゴム会社の研究所の実験室で合成している。
特開昭60-226406(基本特許として公告となっている)は、無機材質研究所から出願された特許だが、この特許出願後、ゴム会社で2億4千万円の先行投資が決まり、事業化がスタートした。
始末書を書かされたり昇進試験に落とされたり、逆風ばかりだったが、研究開発本部長が交代してから、研究所に配属されてゆっくりと研究開発ができるようになった時代の思い出は、今でも忘れない。
(注)当時レーリー法しかなかった時代に簡単に高純度SiCを製造できたので無機材研で大騒ぎとなっている。しかし、所長はじめ直接当方をご指導くださった総合研究官や主任研究官の方は冷静で、理研で起きたSTAP細胞のような騒動にならないよう配慮してくださった。無機材研のリーダーによる研究マネジメントが優れていたので、当方はこの高純度SiCの研究で学位を取得できた。
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