2023.03/08 H3ロケット打ち上げ失敗
ロケット開発は失敗を重ねて技術が出来上がる、とどこかに書いてあった。昨日の記者会見でもそのような姿勢が見え隠れし、今回の失敗に対する深い反省の姿勢を記者会見から感じられなかった。
まったくのパイオニアならば、失敗を重ねて、の言い訳もできようが、特許はじめ各種文献で技術を確認できる時代である。ゆえに今回の失敗は、開発設計段階の信頼性工学を導入していなかった、あるいはそれを使いこなせていなかったことが原因の可能性が高いのではないかと疑っている。
ちなみに当方は信頼性工学を勉強してから開発に失敗したことはない。例えば製品化まで半年、と言う難しい段階で、1億5千万円と1年半という見積もりが出ていた工場建設を、8000万円の予算と3か月の短期間で立ち上げている。
ロケットとコンパウンド工場とは難易度が異なる、という人がいるかもしれないが、予算や基盤技術0の段階からの3か月立ち上げに着目していただければ、多少は開発設計段階の信頼性工学の効用をご理解いただけると思う。
タグチメソッドも信頼性工学のツールの一つだが、FTAやFMEAを愚直に行うことが重要である。記者会見をこれまで聞いてきてこれらをやっていなかったのではないかと疑いたくなる発言、あるいは信頼性工学そのものを小ばかにしているような発言も聞かれた。
科学者は信頼性工学をバカにしたくなるものらしい。当方はゴム会社時代に周囲が科学者ばかりの研究所でバカにされながら愚直に日科技連で学んだ信頼性工学等を実践してきた。
科学者と言うものは、このような愚直な技術者をバカにするものだと当時学んだが、これまでの人生経験から、そろそろそのような考え方を改めて信頼性工学を真面目にJAXAは取り組むことをお勧めする。
H3の一段目は新たな開発ゆえ、と前回言い訳ができたが、2段目のエンジンは新規開発ではない(注)。元ロケット開発技術者のインタビューで、着火信号が出されなかった可能性が高いとの説明が他のニュースであった。
政府は、今回の失敗について責任者をどう処分するのか考える前に、今後もお金を出す予定ならば信頼性工学の導入と徹底をJAXAに迫るべきである。あるいは思い切って国として開発をあきらめると引導を渡すのも選択肢として考えるべきだ。
原因究明に時間がかかるようであれば、これまでの開発手法が間違っていたと判断すべきである。技術開発は科学の研究と異なり、機能が動作しない時の原因は以外にも単純であり、解明しやすい。また信頼性工学の導入によりそのように技術を組み上げることが可能だ。
少なくとも責任者の答弁において信頼性工学の香りが漂うレベルまでならない限り予算を出さない、という強い態度でJAXAに臨んでほしい。今のままでは税金がもったいない。次回失敗しないために信頼性工学を学びたいなら、弊社はいつでもご相談にのります。
(注)電気回路が新規開発の可能性があるが、電気回路であれば、ロバスト設計を行えばミスを防げる。どこまで信頼性確保のための努力を行ったのか疑問が残るところである。
カテゴリー : 一般
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