2023.04/11 技術が生まれた日(3)
知識には学校で習う形式知以外に経験知と暗黙知がある。技術者がイノベーションを起せるような技術を発明するためには、形式知だけ優れていてもだめで、経験知や暗黙知も鍛える必要がある。
極端な言い方をすれば、今の時代であれば形式知など無くても 形式知について CHAT GPT に尋ねればよいのかもしれない。しかし、経験知や暗黙知、とりわけ暗黙知は、AIには頼れない、技術者個人の中に形成されなければ活用できない知である。
この知の重要性について、大学の教養課程の哲学の時間に学んだ。おそらく、どこの大学でも哲学を履修すれば知の歴史について学ぶはずである。
問題となるのは、経験知や暗黙知が苦しみ努力しなければ身につかない知という特性を持っていることだ。大谷選手が野球少年のように楽しみながら練習している風景を見て、それだけで彼のあの才能が磨かれている、と思っていたら大間違いである。
ただ、苦しみ努力しなければ身につかない知を本当に苦しんでいたなら、マゾ的人格でない限りそれを長く続けられない。
苦しみ努力しなければ身につかない知を楽しく努力できるように自分の中で転換する必要がある。おそらく大谷選手も人知れずそのようにして努力し練習しているはずだ。
科学の思考法では、形式知が不可欠である。しかし、科学的思考で問題解決を試みても否定証明となってしまう問題について、すなわちトランスサイエンス問題については、経験知で問題解決のヒントを得る必要がある。
高純度SiCの前駆体問題は、フローリー・ハギンズ理論で否定されるポリマーアロイを創り出す必要があった。ChatGPTに尋ねても解が得られない問題だった。
これをポリウレタンのリアクティブブレンドから学んだ経験知で解いたのだが、その解き方ではデータサイエンスを用いている。アカデミアの方はご存知ないかもしれないがデータサイエンスは50年近く前から存在していたパラダイムである。
トランスサイエンスはデータサイエンスで解決する、というのは重要な経験知である。この経験知の体系を作り上げる楽しさを40年味わってきた。アカデミアのマテリアルズインフォマティクスは、ただ機械学習と組み合わせただけのまだヒヨコレベルだ。
カテゴリー : 一般
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