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2023.04/19 ダッシュポットとバネのモデル

高分子の力学物性をダッシュポットとバネのモデルで研究する時代がかつてあった。当方がゴム会社に入社し、半年の研修を終えて研究所へ配属された時の指導社員が、その名手であった。


その指導社員からデータサイエンス(当時このような呼び名は無かった。数理モデルによる解析と称していたが、ここではデータサイエンスで統一する)の未来について習い、研究所ではデータサイエンスを隠して仕事をした方が良いとアドバイスを受けた。


当方は、そのアドバイスを無視して、MZ80Kを購入しなければならなくなってからは、積極的にそれをアピールしながら問題解決していた。


ダッシュポットとバネのモデルで高分子のレオロジーをシミュレートする名手の嘆きは、高分子のレオロジーを研究する手法にダッシュポットとバネのモデルは使われなくなるだろう、と言うものだった。


当時のゴム会社でこのモデルにより高分子のレオロジーを論じる限界について結論が出つつあった。研究所は、非科学を排除する風土であり、指導社員はその問題を当方に警告として指導してくれたのだろう。


やや昇進が遅れ、当方が初めての部下だったが、決して仕事のできない人ではなかった。考え方も研究所の他の研究者よりもまともであり、成果に向けて貪欲だった。


大学院をセラミックスの講座で過ごした当方のために、毎朝3時間座学で高分子の力学物性について丁寧に教えてくれた。その時の講義録を基に混練の本を出版できたほどの内容である。


指導社員は科学的ではないと否定されても研究の見通しを得る優れた方法としてダッシュポットとバネのモデルによるシミュレーション技法も丁寧に解説してくれた。


レオロジーについては分子1本から積み上げる研究が現在展開されているが、技術的見通しを得る手法としてダッシュポットとバネのモデルは注目されても良いと思っている。クリープとか緩和現象について注意すれば今でも十分材料設計に活用できる非科学的方法である。


非科学的方法だから排除するという姿勢では、技術開発を迅速に進めることができない。科学的でなくても問題解決できる手法はどんどん取り入れてゆく姿勢がイノベーションの起爆剤になる。データサイエンスもそのカテゴリーの手法である。

カテゴリー : 一般

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