2023.06/10 PPSと6ナイロン(2)
半年後に中間転写ベルトの生産歩留まりを100%にしなければいけない状況で、コンパウンド工場を基盤技術0の状態から立ち上げるには個人の力だけでは不可能だ。
生産用の二軸混練機を導入するだけでも新品であれば発注から半年以上かかる。発注するための社内手続きでも最低1か月以上かかる。高額であれば役員会の承認も得る必要があって常識的判断をしたならば諦めることになる。
この時のセンター長は腹の座った人で、単身赴任したての小生が、早期退職の覚悟でこの仕事を引き受けたこと、コンパウンドの開発から行わない限り半年後も歩留まりは今のまま、と説明したら、8000万円で何とかしろ、と決断している。
8000万円では新品の二軸混練機も購入できないので中古機で量産ラインを立ち上げることが決まり、サプライチェーンの問題からQMSに登録されていない子会社を間借りする方針までその日にすぐに決まっている。あとは成功させるだけである。
中途採用の若者といかにも頭のキレがよさそうな職人二人をメンバーとしたプロジェクトでカオス混合のプラント立ち上げを始めたのだが楽しかった。
3か月ほどでラインが完成したので、まずPPSと6ナイロンだけのコンパウンドを混練している。カオス混合装置の吐出口から透明な樹脂液が出てきたときに、中途採用の若者は腰を抜かした。彼は高分子科学をよく理解していたので採用したのだが、期待通りだった。
カテゴリー : 高分子
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