2023.06/13 材料設計
金属材料やセラミックス材料の設計には相、細かくは結晶に着目して配合組成を設計する。それでは高分子ブレンド(以下ポリマーブレンド)あるいはポリマーアロイの設計の実情はどうか。
ポリマーブレンドの高次構造の相に着目して設計するところは金属やセラミックスと同じように見える。しかし、そこから先が無いのだ。ポリマーブレンドでは相といっても金属やセラミックスのように結晶相ではなく、ブレンドに用いたポリマー種が構成する複雑な相である。
フローリー・ハギンズ理論はこの時重要な理論として50年ほど前から専門の教科書に登場していた。当方の時代には、この理論が1行も登場しない高分子の教科書が存在した。
40年ほど前からそのような教科書は無くなり、説明の量の違いが教科書の特徴となっていた。すなわち、高分子物理の教科書ではフローリー・ハギンズ理論の解説が数ページに及ぶが、高分子合成に関する教科書では一言である。
高分子材料設計の教科書では、おそらく1ページ以上を割く必要があるかもしれない。この理論の解説は難しいというよりも悩ましい理論ゆえに、そこを正しく説明しないと新しい技術の発展を阻害することになるためである。
さて、金属やセラミックスでは結晶相に着目して材料設計が成されるのだが、ポリマーブレンドではポリマー種の結晶相まで考えないことが多い。
樹脂補強ゴムの開発を行ったときも同様であり、当方の書いた報告書では、樹脂の結晶相の割合が樹脂補強ゴムの弾性率を制御しているという結論が新発見として評価された。
架橋密度でゴムの弾性率を制御できることは公知だったが、耐久性も十分見込まれた実用化できたゴムでは、架橋密度よりも樹脂の結晶化度のほうが寄与が大きかった。
注意しなければいけないのは、ブレンドしたすべてのゴムを対象としていない点だ。耐久性も十分にあり、実用的にゴムとして利用可能な樹脂補強ゴムについてである。このようなゴムでは樹脂相は必ず海相となっていた。
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