2023.06/28 数理モデル
現象を理解するために数理モデルを利用する場合がある。ただしこの時注意しなければいけないのは、仮に数理モデルでうまく現象を説明できたからと言って、すぐにそのまま形式知にしてはいけない。
その数理モデルが、過去の形式知と矛盾なく整合するかどうか検証されなくてはいけない。物理化学という学問は、1970年代に分子論的視点で教科書が書き直された。
バーローあるいはムーアの教科書が当時先端の物理化学の専門書としてベストセラーになっている。これらの教科書では、物理現象のいくつかについて分子レベルからの論理展開による解説が成されていた。
ところで高分子のレオロジーについてダッシュポットとバネからなるモデルによる研究が1980年前後まで活発に行われたが、このモデルではクリープを説明できないことがわかり、学問の世界から排除された。
しかし、過去の研究で得られたいくつかの数理モデルは特定条件における高分子のレオロジーをうまく説明していたので、技術分野で今でも使われている。
現象を数理モデルで考察する手法は、それが非科学的であっても技術分野で問題解決に活用すると迅速な技術開発に役立つ。
この時重要なことは、本質的な精度を求めて数理モデルを使おうとしているのか、あるいは現象の理解を進め問題解決のアイデアを得るために活用したいのか、その使用目的に注意する必要がある。
すなわち、形式知を目指す目的で数理モデルを研究するのか、技術開発の効率化のために利用するのかにより、数理モデルの扱いが異なる。
カテゴリー : 一般
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