2023.08/19 データサイエンスの力(1)
40年近く前の話。半導体微粒子をシリコーンオイルに分散し、電場をかけるとそれが固体に近い物性になる。そして電場を開放すると流体に戻る電気粘性流体という物質が研究されていた。
すなわち、電場のON-OFFで流体と固体の異なる状態を瞬時に制御できる魔法のような物質である。これをゴムケースに封入すると防振ゴムやアクティブサスなど様々な製品へ応用できることが期待された。
しかし、シリコーンオイルは高分子への浸透性が高いのでゴムの配合剤を取り込んで増粘する問題があった。ゴムケースに封入して1時間程度の耐久試験を行うとヘドロ状態になり機能が失活した。
この電気粘性流体の耐久性に関わる問題について、旧7帝大の博士2名と修士1名、その他の優秀なスタッフ総勢6人で1年間対策を研究している。
そして、電気粘性流体の耐久性問題は、あらゆるHLB値の界面活性剤を用いても解決できない、という科学的に完璧な否定証明の報告書をまとめている。
そこでこのスタッフたちは、全く添加剤の入っていない加硫ゴムが唯一の解決策と言う企画を提出し、当時の研究所で最もゴムについて詳しいという理由で、高純度SiCの事業化を住友金属工業と進めていた当方に仕事が回ってきた。
耐久性を考慮したら実用化が難しいゴムケースを開発するよりも、耐久性の高い公知のゴムケースを用いて電気粘性流体の耐久性を改善したほうが開発の成功率が高い、と判断した当方は、データサイエンスでこの問題を解決している。
カテゴリー : 一般
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