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2023.08/20 データサイエンスの力(2)

故ドラッカーは、「優秀な人ほど成果をあげられない。その原因は、間違った問題を正しく解くからだ。間違った問題の正しい答え程有害無益なものはない。」、と語っていた。電気粘性流体の耐久性問題に対して完璧な否定証明を行った優秀な人たちを見て、故ドラッカーのこの名言を思い出した。


ゆえに、優秀な人たちの完璧な否定証明は、間違った問題が解かれた結果、と捉え、正しい問題を考えた。正しい問題は、電気粘性流体の耐久性問題を解決できる界面活性剤を見つけること、である。


界面活性剤が使えるかどうか、として問題を解くと否定証明をした方が簡単である。優秀な人たちは、同じ給与ならば楽して成果を出そうと考えて、そのような問題を研究したのかもしれない。


イムレラカトシュも方法の擁護の中で完璧な否定証明についてなぜそれが生まれるのか述べている。科学で何でも解決できる、と考えていると否定証明に陥る可能性が出てくる。


トランスサイエンスと言う言葉がサイエンスに掲載されたのは日本でセラミックスフィーバーが起きていた1980年代であり、日本の研究者でこの言葉の重要性に気がついた人はほぼいない。


当時の日本では、いけいけドンドンの科学評論ばかりだった。トランスサイエンスという言葉を生み出したのはアメリカであるが、そのアメリカ人が書いた「Japan as No.1」は、日本でベストセラーになったりしていた時代であり、トランスサイエンスなんて関係ない、と思った研究者もいるかもしれない。


しかし、科学で問うことができても科学で答えられない問題をどのように解くのか、技術者は真剣に考える必要があった。科学で答えられなくても、現象をつんつんとつつくような実験を行えばぴくぴくとデータが得られる。


仮説に基づく実験だけでなく、つんつんぴくぴく実験が必要で、それにより集められたデータから知を取り出す作業がトランスサイエンスの時代に重要になってくる。


ゴム会社で30年続き、今でも愛知県のセラミックスの会社で事業が行われている高純度SiCの半導体治工具事業のエンジンとなっている高純度SiCの新合成法はツンツンピクピク実験で誕生している。


しかも直交表を用いた実験であり、フローリー・ハギンズ理論に反する条件も検討されて、そこから技術が誕生している。すなわち集められたデータについてデータサイエンスで考察し技術を作り上げた事例である。


この成功体験があったので、電気粘性流体の耐久性問題では、あらゆる界面活性剤を用いても問題解決できない、と結論づけられた問題でも、界面活性剤の検討をおこなうツンツンピクピク実験とデータサイエンスの解析をコンカレントで行い、一晩で解決している。

カテゴリー : 一般

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