2023.09/01 お化けの話
フィルムの帯電防止層を開発していて、負の誘電率に遭遇した時には驚いた。ちょうど福井大学客員教授に就任した頃で、お世話になった先生が電気化学の教授だった。
ベセラゴが予言したそうだが、キワモノと言われており、データに絶対値をつけて発表したほうが無難だとご指導を受けた。
すなわち、研究の本筋とは関係ないところで研究の価値を下げてしまう問題があったからである。当時取り組んでいたのは、パーコレーションの検出方法である。
当方は、技術経営には興味があったが、基礎研究に身をささげるまでの勇気は無かった。ゆえに、インピーダンスに絶対値をつけて、誘電率の議論とならないように発表を工夫している。
それから10年以上経過して、半導体無端ベルトの開発を担当したときに、「倉地さん、たいへんなものができてます」と電気専門の部下がデータを見せてくれた。負の誘電率である。
確かに大変な現象であるが、半年という限られた時間の中で、カオス混合プラントを立ち上げ、無端ベルトの押出成形歩留まりを10%から100%にしなければならない状況で、少し迷惑な話だった。
高分子の導電性を制御するために、導電性微粒子を絶縁体である高分子に分散し、そのパーコレーションを制御する必要がある。その実験過程で負の誘電率がお化けのように現れた。
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