2023.09/03 人生やり直せるか
大人のファンタジードラマの設定として、カフカの「変身」のような自分が別の生き物になるタイプや、人生をリセットしてやり直してみたりするタイプ、タイムスリップして別の時代を生きるタイプなどがある。
いずれもあり得ない設定なのでファンタジーなのだが、最近人生をやり直すタイプのドラマが流行しているらしい。
『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』や『東京リベンジャーズ』『ブラッシュアップライフ』などのタイトルが並び、これらのドラマが流行する社会背景の解説がWEBニュースにあった。
この解説を読み、これがこの10年の傾向であることを知った。10年前と言えば、村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると巡礼の年」がベストセラーとなっている。
名古屋が関係したこの小説では、年上の恋人沙羅からのアドバイスで、昔の友人たちに主人公は会いにゆく。すなわちこれが巡礼なんだろうけれど、巡礼途中で沙羅が他の男性とデートしている様子を見つけて慌てる。
そして明日沙羅にプロポーズを断られたら、と悩んでいるところで終わるストーリーで、とにかく今を懸命に生きることが大切であることがテーマとなっている。
ストーリーが分かっていても村上春樹の小説は面白いので、もし村上本を一冊読むとしたらこの本をお勧めする。2時間ほどで一気に読めるので、他の著書のように途中で読み飽きることはない。
残念ながらWEBニュースで紹介されたTVドラマを見ていないので、その解説について評価できないが、その解説に書かれていた、「人生をやり直す」、という考え方では、多崎つくるの巡礼は参考になる。
彼は高校時代の友達と会い、自分の過去と向き合うのだが、この小説では、そのきっかけが沙羅のアドバイスである点が面白い。自分の気づきではないのだ。
ところで、人生のやり直しは、誰でも考えるものらしい。人生で成功した友人たちと話していても、一つや二つ「もしーーだったなら」という話が、酒の肴として飛び出す。
しかし、若い人たちが、「人生のやり直し」にあこがれるのは、少し不思議に感じたりする。それよりも今の自分を見つめなおし、これから何をしたいか具体化するために、定年後何をするのかよく考えることをお勧めする。
人生100年時代に、組織人としては65歳までしか生きられないのだ。企業によっては、55歳で線引きをしているところもある。
30歳や40歳で過去のやり直しにあこがれるくらいなら、65歳過ぎてからの人生を真剣に考え、自己実現の戦略を練ることの方が大切である。
ゴム会社は親切にも管理職に対して55歳過ぎると閑職にしてくれる。組織を離れた人生について、10年間考える猶予の時間を給与とともに与えてくれるのである。
未来は、今の行動変容の結果であることを知ると、多崎つくるのように巡礼をしている暇など無い。20年、30年先にまだ長い人生があることを若い人は気がつくべきである。
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