2023.10/04 まず何から学ぶか(4)
サンプリングについて正しく理解でき、そこから平均値や誤差、さらには誤差の分散の意味まで正しく身につけると科学の実験方法の落とし穴に気がつくはずだ。
実は科学の方法にこだわっている人も正しく統計学を身につけると、否定証明に走ることが無くなるだけでなく、新たな発見を可能とする心眼を育てることができる。
ゴム会社の研究所で科学を命とした前任者から交代した当時の本部長は、研究所の改革に着手したが、別の本部長に交代したとたんに、元の研究所に戻ってしまった。そしてそこから生まれた電気粘性流体の耐久性問題に関する否定証明は、科学的に完璧な報告書だった。
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この研究の結果生まれたのが、「加硫剤から老化防止剤まですべての添加剤が入っていない、世界初のゴム開発」というテーマであるが、ゴム会社の研究所で最重要テーマとして扱われた。
ゴムをご存知の方ならば大笑いするような出来事だが、これを笑ってはいけないことは、サラリーマンなら理解できるはずだ。当方は笑いをこらえて、テーマを担当するにあたり1週間の猶予を申し出ている。
そしてその1週間でデータサイエンスの手法で問題解決したのである。この技術成果は特許として成立しているが、明細書案を作成しても出願にあたり当方一人だけの発明者にしていただけなかった。
さて、電気粘性流体の耐久性問題では、どこに落とし穴があったのか。それは、界面活性剤で問題解決できない、という否定証明の結論から想像がつくと思われるので詳細を書かないが、分子構造既知でHLB値も正しく求められる界面活性剤だけ検討していたのである。
すなわち、研究を行うにあたり、問題解決の可能性を「科学的に正しい」と言える範囲に絞って検討していたのだ。未だ界面科学について未解決の領域が残っているのにそのようなフィルターをかけてしまっては、自ら解決策を排除しているようなものである。
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