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2023.10/28 材料の破壊と寿命予測

金属やセラミックスの破壊機構やその寿命について形式知が存在し、予測が可能だ。そしてその予測法が裁判で用いられたりしている。御巣鷹山の旅客機墜落事故でもこの成果で、墜落した飛行機が以前羽田でしりもち事故を起こしたことが原因と結論が出ている。


この裁判で用いられたのは、フラクトグラフィーと呼ばれる手法だが、高分子材料技術者でご存知の方は少ない。そもそも高分子材料の破壊について詳しい研究者も少なくなった。


ゴムについては理解しているが、樹脂については知らない、と平気で答えるアカデミアの先生もいらっしゃる。しかし、この先生は誠実である。樹脂とゴムでは異なる破壊機構となる場合があるからだ。


また、樹脂の破壊原因とゴムの破壊原因では、前者の方が考察するときに困難を伴うこともある。当方が福井大学で客員教授をしていた時に講義でこの話をしたら、留学生の聴講生が材料力学の講義でそのような説明が無かった、と不満そうな質問をしてきた。


日本の大学で材料力学や応用力学の講義をするときに破壊の話まで扱わないからだが、これは、破壊力学の考え方のパラダイムが異なるためである。


当方はゴム会社でゴムからセラミックスまで扱ってきて、社内の破壊の専門家との交流を通じ、このことを学んでいる。特に一人ゴムの破壊についてマニアと呼んでも良い研究者がいたので、樹脂補強ゴムを開発していた時に大変鍛えられた。


ゴムの破壊機構が分かっていないのに樹脂で補強した材料を開発して寿命をどのように評価するのか、と当時は大変いじめられた。しかし、このいじめがあったおかげでよく勉強できた。


金属やセラミックスの破壊については、社内の優しい破壊の専門家からご指導いただき、やはりよく勉強できた。金属やセラミックスの破壊の研究者は優しかったが、ゴムの破壊マニアの研究者にはやたらといじめられた。


おそらく、形式知が完成していない分野だったので、いじめる以外知の伝達方法が無かったのだろう。素直に自分も良く分からない、と言ってもらえればうまくコミュニケーションも取れたのだが残念である。

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