2023.11/04 難燃性高分子
ほとんどの有機高分子は空気中で燃える。室温で燃えにくい高分子でも温度を上げればよく燃えるようになる。ちなみに400℃以上では空気中で引火しない有機高分子は存在しない。
すなわち、空気中と同じ酸素濃度で400℃以上に加熱すればどのような有機高分子でも燃える。ただし、継続燃焼できるかどうかは、有機高分子の一次構造と高次構造あるいは難燃剤の有無で変化する。
仮にうまく炭化し、継続燃焼を阻止できたとしても、450℃以上の空気中では炭化構造さえ燃えてしまう。難燃性高分子を50年近く前に研究し見出した結論であるが、かぐや姫の期待に応えられない結果にがっかりした。
難燃性高分子という言葉が使われるようになったのは1970年以降であり、それ以前は不燃性高分子の研究が真剣に行われている。
ダイヤモンドは炭素でできているが450℃程度では空気中で燃えないので、科学者は期待して不燃性高分子にチャレンジして耐熱性高分子の研究が進み、1970年末にはその総説が発表されている。
耐熱性高分子の中には、空気中で容易に着火しない構造の化合物も存在する。フェノール樹脂はその耐熱性高分子の一つであるが、製造条件により、空気中で容易に着火して継続燃焼するようなフェノール樹脂を作り出すことができる。
この事例は耐熱構造として一次構造だけでなく高次構造も重要であることを示している。フェノール樹脂は、高次構造の制御により、極限酸素指数で20前後から40前後まで変化する耐熱性高分子である。
高分子の高次構造について解析が難しかった時代の耐熱性高分子の研究は、群盲像をなでる状態に近かったのではないか。
pagetop