2023.12/10 データの解析力(4)
ゴムケースに封入した電気粘性流体の耐久促進試験では、1日でゴムからのブリード物により電気粘性流体が増粘し、ヘドロ状となり機能しなくなった。
この問題を解決するためには、界面活性剤を電気粘性流体に添加しミセルを形成して、ブリードアウト物質をそのミセルに閉じ込める以外に方法はない。
材料技術に詳しい人ならば、ヒューリスティックにこのような解を導けるはずだ。ところがこの問題を構造既知のあらゆるHLB値の界面活性剤を用いて検討し答えを出そうとしたところ、すべてのHLB値の界面活性剤を検討しても問題解決できなかったという。
この解法における大きな問題点は、仮説として「構造既知のすべてのHLB値の領域に存在する界面活性剤」としているところである。界面活性剤の中には、構造不詳の怪しい界面活性剤も存在する。
それらの候補を省き「科学的に研究を進める」視点だけで邁進した研究者達は誰も気がつかなかった。また、アドバイスをしても非科学的な候補の検討は時間の無駄として却下された。
電気粘性流体に用いるカーボン粉体については構造不詳のカーボン(注)を用いていたにもかかわらず、研究に用いた界面活性剤についてだけ、わざわざ自分たちで分析データも揃えていた。
そして、「構造既知のすべてのHLB値の領域からサンプリングされた界面活性剤について検討し、問題解決できない」という証明を1年かけて、さらにゼータ電位はじめ当時の先端分析機器を駆使して否定証明を展開した。
繰り返すが、界面活性剤の中には構造不詳の界面活性剤というものが存在するのだ。しかし、それらは、「科学的視点」というフィルターにより排除された。
(注)カーボンについてもあらゆる分析をしていたようだが、共同研究先から提供されるカーボンについて球晶ができていることぐらいしか分からなかったという。この点についても後日「科学と非科学」と題して科学の研究における問題点を述べる。現代が科学の時代であることを当方は否定しているのではない。科学の時代を当然として、だから研究とか実験をどのように進めるべきかを述べている。科学の時代だから科学的に考える、というのは当然であるが、それでは形式知で明らかな当たり前の答えしか出ない。
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