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2024.05/08 データサイエンスと私(15)

簡易耐火試験に合格する耐火天井材用のフェノール樹脂発泡体のロバストを高めるには、難燃剤の添加が必要だった。


フェノール樹脂の難燃性についてLOIを21以上となるようにロバスト設計するのは簡単だった。しかし、簡易耐火試験は、実火災を想定した試験であり、試験法そのものも他の難燃試験同様に試験中にばらついた。


簡易耐火試験法の発想は、JIS難燃2級が科学的に安定な試験法として開発された反省からきている。すなわち、この評価法を研究し、それに合格するためだけの材料設計が容易だったが、その結果実火災に耐えられない天井材を世の中に生み出してしまったからである。


具体的には、LOIが21以下の材料でありながら、防火性が十分にある、と評価してしまう評価法だった。その結果、世の中に空気中で継続燃焼する防火天井材が普及したのだ。新しい評価法では、LOIが21を越えていない材料を絶対に合格させない仕様で考案された。


フェノール樹脂発泡体の製造条件を管理して、難燃剤を添加しなくても新しい評価試験に合格できる技術はできたが、ゴム会社はフェノール樹脂の前駆体を外部から購入し、フェノール樹脂発泡体を製造していた。


この前駆体がばらつくと、フェノール樹脂発泡体の難燃性もばらつくことが問題である。すなわち、高次構造が前駆体の影響を強く受けばらついていた。フェノール樹脂メーカーと打ち合わせを重ねてもロバストを高める方法が見つからなかったので難燃剤の添加を検討している。


ところが、この難燃剤の添加も高次構造に影響を与えたので、どのような難燃剤が良いのかデータサイエンスで解析している。この時、信号因子として難燃剤の添加量を用いてLOIを目的変数とした相関係数をラテン方格の外側に配置した実験計画法で実験している。


タグチメソッドによく似た方法で、この時の経験談を故田口玄一先生にお話ししたところ褒められると同時に、感度重視の好ましくない実験と批判されている。ちなみに、タグチメソッドは、最初から外側に因子を配置した実験計画法ではなかった。


これは、タグチメソッドの教科書に書かれているが、昭和28年に伊奈製陶で行われたタグチメソッドでは、内側の列をうまく活用している。当方は、最初から外側配置に注目したところを褒めていただいた。

カテゴリー : 一般

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