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2024.05/14 開発無限ループ(1)

研究開発を進めていると、二律背反問題で無限ループに陥る場合がある。例えば、導電性微粒子を用いて高靭性の高分子導電体もしくは半導体を設計しようとするときである。


高分子に導電性粒子を添加すると抵抗は下がるのだが、目標となる導電性を得るために粒子の添加量を増加すると脆い材料となる。


パーコレーション転移に注意しながら、繊維状の粒子に代えたりとかいろいろ苦労して開発に成功すればよいが、粒子にこだわっていると、いつまでたっても導電性と脆さの設計値を満たす材料にたどり着けない。


すると、無限ループに陥るのだが、担当している本人は、もう少しでたどり着けそうなデータが出たりするので、いずれ成功すると信じている。


PPS/6ナイロン/カーボンの配合で設計された半導体無端ベルトの開発では、6年間開発が進められ、半年後にようやく製品化にたどり着いたから、前任者から交代してほしいと言われた。


おそらく前任者は半年後に製品化は無理だと思って依頼しに来たのだろうが、一流コンパウンドメーカーと6年間開発してきたのでうまくゆく、と気楽に説明していた。


本当にうまくゆくならば自分で最後まで担当すればよいのだが、本音では難しいと思っていたのだろう。話を聞くだけ、と応えていたら、リーダーを交代してほしい、と何度も懇願してきた。


6年間の開発で蓄積されたデータを解析したところ、3パターンで技術的には同じことを繰り返し、無駄な開発を進めていたのだが、一流コンパウンドメーカーも含め誰も気がついていなかった。


このような開発は何度も見てきたので、自分でコンパウンド工場を立ち上げ、半年後にはそこで生産されたコンパウンドで半導体無端ベルトの生産を開始している。その時に用いた技術は、6年間の開発で検討されてこなかった、全く異なる芸術的なコンセプトだった。

(注)科学的に開発を進めると無限ループに陥ることがある。このことにすぐ気がつくかどうかが重要である。なんでも科学で明らかになっている、と盲信すると、無限ループから抜け出せない。高分子材料では科学で不明確なことが多いと悟ることが重要である。経験知の体系を作成してみると理解できる。

カテゴリー : 一般

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