2024.05/30 高純度SiCの製造方法
高純度SiCは、高純度の珪素化合物と高純度炭素から製造される。この方法が最も経済的である。純度の低い原料を用いてSiCを製造してから高純度化を行うにはレイリー法となり、プロセスコストがかかる。
1970年代に主な高純度SiC製造方法は出揃ったが、画期的方法が1981年に生まれている。しかしそれが研究として完成するのは1982年で、基本特許は1983年に出願されている。
誕生した場所はブリヂストンであり、基本特許は無機材質研究所から出願された。なぜこのような経緯となったかは、後日公開したいが、この技術が日本化学会技術賞を受賞するまで、様々なドラマがあった。
しかし、決してプロジェクトXでは放送されないだろう。美しい話よりも、他人の成果を自分の成果のように、すなわち大学の先生も含め他人の成果を奪って出世された方が多いからである。
例えば、学位を出すから研究を見せろと言って、そこから論文を勝手に出した国立大学の先生が1名いる。これは悪どいやり方であり、その先生を筆頭に小生をそのあとに名前を書いて出された論文で公開されている。
研究のアイデアを何も出さず、他人の研究論文を勝手に自分を筆頭にして発表してしまう厚かましさにあきれて学位を蹴ったが、その後紆余曲折あり、中部大学で学位を取得している。
そのほか、学会賞含め証拠が残った誰も見たくないヘドロのような話をいくつも出さなければいけないので、さすがにNHKも放送できない。
過去に企画されたらしいが、関係者からやめてほしい、との要望でお蔵入りとなっている。今最新版のプロジェクトXが放送されているが、このような誰も見たくないような話は決して出てこない。
良い発明の中には、それが良すぎて周囲の目がくらみ、人間の本性が現れてしまうドラマとなる場合がある。そして、その中に一人聖人が現れて世の中に成果として出てゆくのだろう。
高純度SiCの発明でも聖人が現れ、そのおかげで事業化されて現在も技術が伝承されている。この聖人の手紙も残っているので、いつかドラマをこの欄で公開したい。
ゴム会社で半導体材料事業が誕生した話は、本来伝承されるべき話だが、当方が学会賞の審査員を務めている時にも出てきた高純度SiC事業の推薦書にも無機材研の研究者が書かれていない問題があった。
住友金属工業とのJVが無かったら決して立ち上がってゆかなかった事業であるにもかかわらず、一言も出てこないだけでなく、ひどいのは高純度SiC合成技術以外のすべての基盤技術が無機材質研究所のお世話になったのに、最初に出された推薦書にはやはり一言も書かれていなかった。
FDを壊されたり様々な事件が無ければ転職などしなかったが、転職したおかげで客観的にこの発明に関わる人間模様を学ぶことができた。
プロジェクトXという番組が成立する背景には、成功体験で公開できるような美しい話が稀だからなのだろう。高純度SiCの事業について当方は関係者の方々からお手紙など頂いているので、学会賞の資料など証拠が多数残っている。
いつかこれらを公開したいと思っている。理由は、事業が成功するためには、マネージメントの役割が大切であるが、キーマンとして私利私欲に左右されない誠実真摯な人材が最も重要である。
志賀直哉の「清兵衛と瓢箪」という短編小説がある。芥川龍之介の「芋粥」と並んで、人間の本性を表現した名作と言われているが、これが名作と言われるゆえんは、美しく輝く人間の姿もそこに描かれているからである。
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