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2024.07/07 高純度SiC前駆体のアイデア

1982年にエチルシリケートとフェノール樹脂から合成された前駆体を用いる高純度SiCの発明が生まれているが、このアイデアの源泉は、ホスフォリルトリアミドをどのようにしてPVAに分散するのか、という工夫が経験知として活用された。


修士論文の研究テーマは、高分子の難燃化ではなかったが、教授の企画した研究テーマでは、研究例が多く、研究として論文をまとめるのは簡単だったが面白くなかったからである。


ちなみに、ホスフォリルトリアミドの重合については、過去に研究例があり、そこに書かれていなかった条件を検討し、生成した化合物のプロトン導電性を測定した論文を書いている。


このような研究をするのは容易であるが、学問への貢献度としては低い。「何か新しいことを見つけるのが研究である」と大阪大学小竹先生の言葉を大学4年の時に学び、何か新しい発見のあるテーマを内心は出してほしかった。


研究者の教育のために研究結果が分かり易いテーマを出してくださった、と好意的に当方は捉えていた。しかし、直接ご指導された先生が、大学ではもっと科学にチャレンジするようなテーマをやるべきだ、などと毒気のある毎日で、自然と未踏査の分野へ追いやられた。


しかし、ホスフォリルトリアミドを捨てきれず、2年間プロトン導電体やホスファゼンとの共重合体などその応用研究を行い、6報ほど研究論文をまとめている。


そのうちの1報がPVAの難燃化であるが、とにかくどのようにホスフォリルトリアミドをPVAへ均一に分散するのか、そのプロセシングアイデアを考える毎日だった。


ケミカルアブストラクトが当時のデータベースであり、英文であることが苦痛だったが、1年格闘したところ不思議にも斜め読みができるようになっていた。


今のAIは便利である。日本語で答えてほしい、と希望を出せば、流れるような標準語で答えてくれる。大阪弁や名古屋弁でも努力して出力してくれるが、名古屋弁は下手である。


やや、話が外れたが、ケミカルアブストラクトにPVAをホルマリンで架橋する研究例が載っていた。ホルマリンがPVAに分散するならば、ホスフォリルトリアミドにホルマリンを付加させて変性したら、分散性が上がるのではないかと考えた。


すなわち、メチロール基の反応性で分散を改善しようと考えたのである。このアイデアは大成功で、これが経験知となり、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとの混合においても反応させれば、すなわち、リアクティブブレンドを行えば均一に混合できるとアイデアをまとめることができた。


リアクティブブレンドについてはポリウレタンの合成方法として、当時知られていた。しかし、PVAの架橋は同一カテゴリーとして説明されていなかった。


情報を知に変える時にどのようなカテゴリーの情報なのか自分でも吟味しなおすことは、アイデア蓄積のために重要である。生成系AIの動作を知ってから、ますますこの方法が有効であると思っている。

カテゴリー : 一般

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