活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2024.07/13 高分子の密度

有機高分子材料(以下高分子)は、無機材料と比較し、密度ばらつきが大きい。無機材料でも空隙や欠陥が密度ばらつきを生み出すので、この表現は誤解を生むが、「空隙や欠陥が無い場合にも」と一言加えると、誤解も無くなるかもしれない。

但し、高分子の自由体積を空隙や欠陥と見なさない、という前提になるが。ややこしいのは、どこからが空隙で、どのサイズ以下が自由体積なのか、という区別が難しい場合がある。

そのような議論を避けるために、「空隙や欠陥の無い状態で、高分子の非晶質相の密度ばらつきは、無機材料の非晶質相のそれに比較して大きい」と、やや面倒な言い方をすれば上げ足をとられないかもしれない。

それでは、高分子の結晶は、無機材料と比較してその密度ばらつきは同じなのかというと、これも少しばらつきが大きい。

石丸構文に出てくるような捻くれたツッコミを警戒していると、このような問題の議論は難しくなる。しかし、高分子について考えるときに、実は密度以外の特性でもおおざっぱなとらえ方をしないと、現象から新たなアイデアを生み出すことができない。

例えば、弾性率は密度に依存する。ゆえに密度ばらつきは弾性率が関わる、引張強度や曲げ強度、衝撃強度のばらつきを生み出す。誘電率も同様に密度の影響を受けるので、屈折率などもばらつく原因となる。

そもそも高分子の密度は、自由体積の量を制御できないのでばらつく。そこへ成形時に空隙や欠陥が入ることが避けられないので、さらに大きくばらつくことになる。

射出成形体と延伸により製造されるフィルムとの密度ばらつきの比較をすると、後者は少し小さいので空隙や欠陥の存在で生じる影響を見積もることができる。そのような見方をしても、高分子の密度ばらつきは、無機材料のそれより大きい。

何を言いたいのか、書いていて不安になってきたが、形式知ですべて論じることができない分野では、このような不安はつきものである。

勇気をもって結論を言えば、高分子は無機材料に比較して密度ばらつきが大きいが、それには自由体積の影響がある。また、空隙や欠陥は、無機材料よりも入りやすく、さらにそのばらつきを大きくする原因となりうる。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop