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2024.07/28 小便小僧の思い出

高分子の難燃化技術で困るのは、開発過程で疑心暗鬼となるトランスサイエンス特有の問題である。例えば、耐熱性高分子として知られているフェノール樹脂は、その分子構造から空気中で自己消火性を示すように思える。


ところが、プロセス条件を制御して、空気中で面白いほど燃えるフェノール樹脂を製造することもできれば、マッチの火で着火さえも難しいフェノール樹脂も創り出すことができる。


すなわち、難燃性に高分子の高次構造が関わっているため、プロセスでその難燃性が大きく変化する。高分子の高次構造がその難燃性に影響していることをご存知ない方は多い。フェノール樹脂天井材の開発において、難燃剤を添加した配合をプレゼンテーションしたら、馬鹿にされた経験がある。


したり顔で高分子の難燃化機構の説明を聞かされ、それゆえ耐熱高分子の大半は自己消火性のはずだ、と説明してきた。科学的に推論を進めればそのような言い方もできるかもしれない。


そのとき、小便小僧の代わりを少女ができたか、と逆に質問して会場が大笑いとなったことがある。今ならば問題発言かもしれないが、当時は意味不明の発言として大笑いとなった。


何でも科学で説明できると考えている人には、意味不明の命題をぶつけると面白い。一緒に笑いだす人もおれば、突然怒り出す人もいる。


後者は、冗談を理解しない人であるが、科学で現象をすべて説明できる、と盲信している人も技術のプレゼンテーションの場で冗談を言っていることに気がついていない。


今ならトランスサイエンスという言葉も常識となったので、すべての現象を科学で説明できる、と信じている人は少なくなったかもしれないが、40年以上前の日本は、アメリカでトランスサイエンスが話題とされてもセレンディピティーだけ輸入するような時代だった。臭いものに蓋をしたのだ。

カテゴリー : 一般 高分子

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